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NOMLAB : NOMLAB(ノムラボ)は乃村工藝社の空間のプランナーを中心としたプロ集団ですNomura Open Innovation LAB
下國 由貴 Glo-calプランナー
Glo-calプランナー

made in JAPAN の未来と海外発信について

2019/10/16
「いま、そしてこれからの空間づくりが持つ可能性」をテーマに、
様々な先駆者・挑戦者にインタビューを行う対談企画。
バイヤー目線で空間をつくる株式会社メソッドの山田遊さんとのインタビュー対談(後編)

前編に続き、山田遊さんに日本の伝統文化と地域活性化の
“これから”を伺ってきました。

「伝統工芸品」というより「モノ」が好き

(前編はコチラ)http://www.nomlab.jp/jp/nomlog/detail/14

下國:
遊さんは、日本の伝統工芸品や地域産品の魅力発信にも取り組まれていますよね。
「燕三条 工場の祭典」のディレクションや国立新美術館の「スーベニアフロムトーキョー」の
MD(マーチャンダイジング)、弊社とご一緒いただいた案件だと、東京ソラマチ内の
「産業観光プラザ すみだ まち処」の商品ディスプレイなど。

山田:
伝統工芸品に詳しいと言われがちですが、「モノ」が好きなんです!
「モノ」を一生懸命作っている人が好き。

自分の好きなものが、世の中に流れて行く仕掛けをつくりたいという気持ちが強いです。
「モノ」にまつわる潤滑油という役割で、社会と関わっていきたいですね。

歴史好きから始まる、伝統文化への関心

下國:
「モノ」が好き、というのは私も同じです。
私の場合は「モノ」から感じられる「ヒト」のストーリーが好きですね。
様々な技法をこらして建てた神社やお寺、壁画とかが好き。
今のように便利な道具や豊富な情報がなくても、精巧なモノを作った昔の人ってすごい!
しかも、直接会ったことがないであろう東洋と西洋で
似たようなモノが作られていたり…

中学生のとき、国語の教科書に掲載されていた「獅子狩文錦」の話に感銘を受けました。
(「獅子狩文錦(ししかりもんきん)」という獅子を狩る人が描かれた布の切れ端が正倉院から発見され、
ペルシャや中国でも似たような織物が発見され、調査を進めると東西の文化が影響し合った痕跡であったと判明。
織物研究家が復元する…というドキュメンタリーを教科書用にアレンジした内容だったかと。。)


マンガや映画の影響で、古代文明・秘宝・神話…みたいなキーワードが好きで、
大学では東西交流史や仏教壁画の研究にハマっていました。
専門の授業がなかったので地下書庫に籠って文献を読み漁り、
キリスト教系大学なのに日本史の先生へ無理やり卒論提出。
いろいろ無茶苦茶です(笑)
「全然違う文化で生きる人同士が影響し合ってる」

という形跡をたどるのが楽しかったです。
けっきょく「ヒト」に帰着してたんだな~。

山田:
僕も専攻は文学部史学科。
イギリスでイスラム美術史を学びました。
東と西の文化の中間地点という意味で、イスラム美術には興味があります。
僕自身も伝統文化に興味ないと言いつつ、歴史好きです。
下國さんのお話を聞いて、あるあると思いました。

僕個人の信条として、"日本の伝統文化が好き”と国を区切って言うことには抵抗があります。
「○○の国が好き!」と限定したくないかな(笑)

下國:
何にも影響を受けずに芸を極める!これだけが好き!と狭めるよりも、
たくさんの「好き」が、自分らしさをつくる気がします。
いろいろな思想と人、コミュニケーションがあって、「良いモノ」「幅のある人間性」が生まれますよね。
そうやって歴史も自分も紡がれているのかと思うと面白い。

 

「伝統文化」を取り入れることは空間づくりの付加価値


山田:
僕からも質問です。
乃村工藝社さんは、最近なぜ「伝統文化」に力をいれているのですか?
バイヤー目線で見ると、正直そろそろダウントレンドかな、と。
「伝統文化」という要素だけでは2020年以降は衰退の一途だと思います。
「ローカル・地域の課題解決」という意味では意義深い事業テーマだとは思いますが…

下國:
力を入れている理由は、「伝統文化」が空間をつくる私たちにとって、付加価値になるからだと思います。
「伝統工芸品」という「モノ」視点だとトレンドの浮き沈みはありますが、
「伝統工芸」を、「受け継がれてきた地域の特徴」と捉えて空間に用いると恒常的な価値になりますよね。

例えば、ある町で博物館をつくる時。
その地域の成り立ち・自然環境・歴史を展示する空間をつくります。
そこに「伝統文化」の要素を空間デザインに取り入れると、空間から地域の歴史を感じられます。
これが付加価値ですよね。



日田市立博物館:1960年に大分県内初の公立博物館として日田市三本松で開館後、2016年に移転リニューアルオープン。
弊社は展示のリニューアルの企画・デザイン・施工をお手伝いしました。
「川と人との関わり大絵巻」は日田市の歴史を絵巻風に展示したもので、壁面素材には地元の日田杉、象徴的なシーンには日田民芸の「起き上げ雛」を取り入れ、
地元の起き上げ雛保存会の皆さまと協力して作り上げました。


下國:
乃村工藝社は、芝居の大道具づくりから興りました。
職人ありき、演出の工夫ありきの世界です。
「伝統工芸」に限らず、地域の工芸・工業を担う職人さんの存在や技術継承は、
空間づくりの未来にも関わります。
 

伝統文化の価値づくりと売り方づくりと
ともに空間をつくる


下國:私はプランナーなので〝こうでありたい”という姿を計画します。
なので、伝統文化を担う「ヒト」とのコラボレーションで新しい価値をつくり、
見せる場所をつくることが、伝統工芸のためであり、地域課題の解決のお手伝いになる
仕事かなと思います。
先ほどの「ヒト」に引っ張られた、勝手な解釈ですけど(笑)

私が手掛けた事例で、福島県二本松市の「菊のまち二本松」という特殊な菊の花のブランディングがあります。
二本松市では、日本の伝統的な園芸文化の一つ「菊人形」を作り、菊の品評会も同時開催する
「二本松の菊人形」という一大祭りがあります。
この菊人形の延長線上に、一本の茎から千輪以上の花を咲かせる「千輪咲(せんりんざき)」という
園芸菊の粋を極めたものが生まれました。
これら二本松の菊の価値を広めたい!というご依頼でした。


一般財団法人 二本松菊栄会の菊畑で千輪咲の苗のお世話をする菊栽培師 鈴木眞一さん。
プロモーションムービーにも登場していただき、俳優のような渋い立ち姿に撮影隊一同が盛り上がりました。(本人はとても恥ずかしがりのキュートな方です)


(PHOTO by 古里寫眞事務所)

【「菊のまち二本松ブランディングプロジェクト」PV動画】
https://www.youtube.com/watch?v=PtYndjuGKb8&t=12s

山田:
僕もそのお話を下國さんから聞いて調べたんですよ。
そしたら、「菊人形」に関するなら乃村さんがやらないで誰がやんねん!という話でした。


下國:
ですよね(笑)
菊人形展は、昔は日本全国で開催されていて、催し物として
仕掛けを発展させたのが乃村工藝社でした。

でも、今回のプロジェクトは見せるだけじゃダメで、「売れるモノにする」お手伝いです。
売れるための見せ方提案から、売るための意識改革、商品価値を底上げするデザイン…
菊を支えるフレームも弊社のデザイナーが新しくデザインしました。


ありあわせの材料で使いまわしていたプラスチック製フレームを、黒いスチールで細く小さく作り直し、花に近づいて見た時の部材の存在感を少なくしました。
また、花首を支えるかんざしを取り付ける際、左右を整列させやすいように高さ基準が分かるフックを設け、かんざしの水平を保てる工夫を施しました。



千輪咲は、一本の茎から千輪の花を咲かせますが、土の中はどうなっているのか…掘り起こす調査も始めて行いました。栽培者の皆さんも初めてとのことで貴重な写真!

プロジェクトには2年間携わらせていただき、かなりメスを入れたつもりです。
色々な取り組みの中で、ガーデンズ・バイ・ザ・ベイ(シンガポールの有名な植物園)に
購入いただいたのが、嬉しい成果の一つでした。
詳細はまた別のところで…
あ、そういえば10月から「二本松の菊人形2019」が始まります。
見に行けるかな~。
 

伝統工芸は衰退していくスピードが速い


山田:
「伝統工芸品」の一つとして、郷土玩具がありますよね。
農家のおばあちゃんが内職でつくっていたモノだけど、各地で途絶えてきています。
後継者なんていない。
内職だから、必要がなければ作らなくなって当たり前!
伝統工芸は衰退していくスピードが速いです。

下國:
稼ぎになるから作る。
「郷土のために…」と思って作ってるわけじゃない。
「〇〇保存会」みたいに意志を持って作り手の輪を広げないと残らないことが多いですよね。
でも、趣味になると本来あったはずの、稼ぎにする術も意識もなくなっちゃう。
クオリティが下がっても、別に売るわけじゃないですからね。

よく言われていることですが、「売り方から考えるモノづくり」をしないと
稼ぎにならない=次の世代に繋がらない

これからの私たちは、価値づくりと売り方づくりの両方から空間をつくっていかなきゃ、と
改めて思います。

山田:
今回、出展してもらった滋賀県信楽のプロジェクトで、「KIKOF」という陶器ブランドがあります。
グラフィックデザインを基軸に活動するキギさんが中心にデザインをして、
地元の陶器メーカーとブランドの方向性から考えています。
互いに領域が違うけどチームで一緒にやっているところが素晴らしいですよ。



陶器ブランド「KIKOF」の商品が並ぶ。一見シャープなカタチだが、手で持ってみると見た目に反して柔らかく陶器のぬくもりも感じられました。

ご覧のとおり、マグカップのデザインは全然信楽っぽくない。
従来の体制だとデザインは全く新しいものは生まれないですよね。
でも、キギさんはグラフィクデザイナーであることを意識しながら携わっています。
だから、紙を折ることに注目して、折り紙みたいな直線だけど紙の柔らかさがある
マグカップ、フラワーベース、食器になりました。

他人の領域を否定せず、自分たちの範囲でベストを目指す姿勢が良いなぁって思います。
六角形は琵琶湖の形状、滋賀県らしさに紐付いている。

六角形の皿もあります。お皿って丸いのがスタンダートですよね。
あえてカタチを変えたことで、食器棚の中で丸皿と重ねられずに目立つ。
皿が並ぶ中で差別化できてます。

しかも、めちゃくちゃ軽い。
食器って、軽さが一つの勝ちパターンだと思うんです。
重ねることになっても上の方になるから、使用頻度が高まるはず。

デザイナーが意識してたのかは分からないですが、バイヤーが勝手に解釈しました。

下國:
”売りどころ”を見つけることは大事ですよね。
私も販売経験者として、トークのきっかけを探す大事さはすごく分かります。

「軽いから、筋力が弱まったお母さんにも使いやすいですよ」と
ご説明すると、「そうね~」と共感してもらえる。
 

”日本人らしく続けて行く”ことが一番難しいけど続けていってほしい。

モノづくりにはしつこくあれ!(笑)


下國:
海外での「メイドインジャパン」人気は高いですが、これからも「モノ」としての魅力は
海外で獲得していけるでしょうか?

山田:
個人的な解釈ですが、日本人は神経質、細やか、繊細さが圧倒的です。
とにかく細かい。
ここまでする?というのは、他のどの国に行っても見たことがないし、
そんな国民性も無いと思います。

それで儲かるわけじゃないところまで作りこんでしまうのが、
日本人ならではのメンタリティであり、美徳でしょうね。
そういうのが伝わって評価されているのではないかと。

でも、”売れてるんだからこれくらいでいいだろう”と思い始めたり、
他の国でも同じクオリティ、信頼、価格が可能となったら、
「メイドインジャパン」の価値は意味を成しません。

こだわりを伝えて行くのは大事だと思います。
デザイナーやメーカーがどれだけ配慮しているか、こだわりは一目で伝わらないので言うべきです。
あと、すごく儲かるわけではないけど、”日本人らしく続けて行く”ことが一番難しいけど、
続けてほしいですね。


下國:
遊さんのおっしゃる通り、私もこの仕事で人に思いを伝えることが増えて、伝える大切さに気づきました。
口に出さないと知ってもらえないし、発信すると誰かしらがアクションしてくれるんです。
反響があるのは自信にもつながりますし、出会いのチャンスがもっと広がる幸運なことだな~と実感しました。

「メイドインジャパン」は、過去から続く信頼の証であり、
今の私たちが担って、これからにつなげていくものですね。
モノづくりにはしつこくあれ!(笑)

継続することの大切さも遊さんからの大切なメッセージだと感じました。
伝統文化やローカル・地域の課題解決など、弊社が手掛け始めたことも、継続してこそ
信頼が得られることだと思います。
なので、これからも弊社の取り組みやプランナーの想いは継続して発信していきたいと思います!



❆°˖❆˖°❆*❆°˖❆˖°❆*❆°˖❆˖°❆*❆°˖❆˖°❆*❆°˖❆˖°❆

山田遊さん、第一回ゲストとしてのご登場ありがとうございました!!

第二回のインタビュー対談はどなたにお会いできるのか…お楽しみに。
 
下國 由貴 Glo-calプランナー
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