nomlog

NOMLAB : NOMLAB(ノムラボ)は乃村工藝社の空間のプランナーを中心としたプロ集団ですNomura Open Innovation LAB
横田 智子 つなぐプランナー
つなぐプランナー

気になる空間 vol.2|DESIGNART TOKYO 2019 レポート(後編)

2019/11/19
「気になる空間」では、
最新の気になる建築や展覧会・イベントなどの空間レポートをもとに
「空間デザインの今」を独自の視点で切り取ります。
第2弾は、今年で3年目を迎えた「DESIGNART TOKYO 2019」をレポートします。

これまでの青山を中心としたエリアから新宿・銀座エリアへと範囲が広がった計104会場での開催となり、
イスラエル、香港、パキスタン、タイなど17ヵ国以上のアーティストが参加する国際的なイベントに発展。
これからの空間づくりのヒントになるような作品をご紹介します。
(前編はこちら
 

HISTORY × PHILOSOPHY|「塩」が語る今昔

本イベントのパートナーカントリーであるイスラエル。交流プロジェクトとして、イスラエルのデザインイベント「エルサレム・デザイン・ウィーク」の展示が表参道・スパイラルガーデンで行われました。古代ユダヤ人の故国をルーツにもつイスラエルは、創造性とイノベーションが入り混じった国として発展し、現在では医療・テクノロジー・スタートアップでも注目され、さまざまなジャンルが融合した独特で革新的なデザインが次々に生まれています。

本展示のテーマは「エデンの園」。自然・文化・テクノロジー・神話の間に生まれる緊張関係を起点に、死海の「塩」と農業革命を象徴する「麦」というイスラエルの資源にまつわる神話の出会いを表現したインスタレーションが展示されました。



塩が敷き詰められたスペースの上部には、象徴的に吊るされた麦。ところどころに置かれた塩の塊には穀物や魚が入っています。2000年前から行われている料理法のひとつとされている、「塩漬け」の保存です。真っ白で無機質な現代的な空間に、遥か昔の「伝統的な食事」を身近に感じられる、という面白さがありました。


ちらっと見えるヒレは本物の魚!
 

番外編:テクノロジーと繊細さの融合

他にも空間の作品ではありませんが、イスラエルの哲学的視点と文化を象徴しながら、新しいテクノロジーや現代的な感覚とが融合した作品が多く見られました。

「THE COMMON THREAD —庭の守り人」は、エルサレムと日本の庭園を維持管理する人に光を当て、ポートレイト写真を刺繍によって表現していました。独自に開発されたアルゴリズムと数値制御装置を活用した、471本の釘に1行の糸が織り込まれた機械によって、自動的にポートレイトが刺繍されていきます。テクノロジーと刺繍の美しさの掛け合わせが素晴らしい作品でした。庭園の管理者を「こだわりを持った創造者」として取り上げているところにも、独特の感性が見られます。


 

MATERIAL × COMPOSITION|シンプルな素材と構成が生む空間

印象的な空間インスタレーションを発表したのは、鬼木孝一郎さん主宰のODSがデザインした「CORD/CODE」。約1年前にオープンしたコスメティックショップ「ザ・ギンザ」の内装デザインを担当されたご縁で、今回地下のギャラリーにて展示を行う運びとなったそうです。



こぢんまりとした空間ながら、段階的に目を引くポイントが。まずエントランスでは、美しい光のゆらぎでお出迎え。商品ディスプレイ用の什器としてデザインされた、アクリルの角柱をさまざまな角度でカットし、ミラーの盤面が貼られた作品です。



その横には「建物の中で建物を俯瞰する」ための1階ショップから地下2階ギャラリーまでの断面模型。そして新作チェア「CORD/CODE」の展示、そしてぱっと視界が開ける空間での迫力あるインスタレーション展示と続きます。金属のコードは、6カ所の起点から少しずつ角度を変えて設置することで、独特のうねりをつくっています。まるでPC上に表現された3次元モデルが現実の世界に飛び出してきたような不思議な空間です。



「線(CORD)で規則(CODE)を生み出すこと」を意味した本展示。構成や素材はシンプルながら、「光」や「連続」によって美しい作品に昇華させ、心を動かす空間でした。
 

PASSION × EXPERIMENT|情熱と実験で生まれたプロダクト

完成されたプロダクトの裏に、「こんなことを実現したい」という想いと試行錯誤が見える、「つくる」ことへの情熱を感じられた作品をふたつご紹介します。
 

スイッチの音が心地いいバランス照明

AXISのJIDAデザインミュージアムにて展示された「Imbalanced balance」は、池田美祐さんと倉島拓人さんによるデザインユニット、M&Tによる作品です。

この作品の面白い点は、紙風船のようなシェードが下の照明からの熱を受けることで、自然とゆらゆら上下に揺れます。何度も上下してバランスを取りながら、ゆっくりと反対側に傾いていき、中心にある横軸とシェードの軸が触れることで照明の電流が切り替わり、「カチッ」と鳴ると同時に今までの照明が消え、反対側の照明が光ります。



左右で繰り返されるこの不安定な揺らぎが、不思議な心地よさを感じさせます。普段は感じられない温度や風に、ふと目を向けるきっかけにもなりそうですね。

デザイナーさんのお話によると、テクノロジーは最低限にして、人間的な感覚に訴える作品をつくりたかったのだとか。テクノロジーの部分は電流が切り替わる部分とスイッチが入るような「カチっ」という音のみ。自然に上下させるためのシェードの形状、厚み、重さや照明の明るさ、軸の比率や重さのバランス等、何度も何度も検証を重ねた結果の作品だそうです。心地よさの裏にその試行錯誤の背景が見てとれ、創造することへの情熱が感じられる作品でした。
 

原始的な樹皮の家具

最後に、六本木の文喫にて行われた展示「Nature as Metaphor -隠喩としての自然」をご紹介します。遠目から見ると、まるで本物の樹皮が丸みを帯びたまま家具になったような見た目ですが、実はフラットに加工されています。本物の質感を残したまま素材として活用するために、樹皮を柔らかくし、フラットにプレスする手法を独自に見出したそうです。その実験的な取り組みと実際に形にしてしまうという、情熱とエネルギーを感じる作品です。



東南アジアで古くから伝えられる、樹皮を布地に加工する技術を視覚化した作品「Scalloping Series」も根源的な自然とのかかわりを感じさせる美しいものでした。



毎年、参加アーティストの国際化やアート、デザイン、インスタレーションなど多岐に渡るジャンルの展示でパワーアップしているDESIGNART TOKYO。来年の開催も楽しみです!
 
DESIGNART TOKYO 概要 
*会期終了しています。来年度については改めて公開される情報をご確認ください。
http://designart.jp/designarttokyo2019/
会期:2019年10月18日(金) 〜10月27日(日)
会場:表参道・外苑前 / 原宿・明治神宮前 / 渋谷・恵比寿 / 代官山・中目黒 / 六本木 / 新宿 / 銀座
主催:DESIGNART 実行委員会
助成:公益財団法人東京都歴史文化財団アーツカウンシル東京
後援:イスラエル大使館、港区

*ご注意ください*
本記事で掲載している展示会およびリンク先のウェブサイトの情報は、当ページ作成時点のものです。
変更されることがありますので、ご了承ください。
横田 智子 つなぐプランナー
つなぐプランナー
取材/お仕事のご相談はこちら ※内容欄に担当者名をご記載ください

nomlog

“空間と体験”について毎日、真剣に考えている乃村工藝社グループのプロフェッショナル達が、
独自の考察や日々の取り組み、研究活動を発信します。

まちづくり の新着記事 地域活性化 の新着記事