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坂爪 研一 プロデューサー
プロデューサー

神社でジンジャエール! バズるヒット商品のつくり方

2021/07/07

すべてはひとつのtwitter投稿から始まった。

 


神田明神が最高のドリンクを売ってる!
いいね3.3万 リツイート2.7万 (2021年7月時点)
ありがたい世間の反応と、その口コミ速度に驚くばかり。


その名も神社声援=ジンジャエール。神社がジンジャエール?
その反響がまたすごい。ハウリングを起こしたかのようだ・・・
その反応をメディアが取り上げ、ついたタイトルが面白い


攻めすぎ神田明神!「神社声援(ジンジャエール)が神ポップ」

どれも言葉選びのセンスが素晴らしい。そして年間販売額が10万本を達成(2019年)。
1つの販売場所から生まれた10万本は、全国で達成する100万本より高密度な商品だ。
今回は、その開発秘話を公開しよう。

 
「神社声援」神田明神でしか手に入らないジンジャエール。おろし生姜入り。(300円税込)

 

きっかけは、伊勢神宮の朔日餅

この商品開発は、1300年の歴史を誇る、江戸総鎮守神田明神様からの業務依頼でスタートしました。神社に賑わいをつくるため、弊社は、神田明神の境内に、文化交流館EDOCCO というホール複合施設をプロデュースさせて頂きました。



開業の半年前、大鳥居宮司(当時。現・名誉宮司)が仰いました。
「文化交流館の開業に合わせて、神田明神の名物みやげをつくれないだろうか?」

「伊勢神宮の赤福さんが販売している『朔日餅(ついたちもち)』のような、並んでも買いたくなるヒット商品がイメージだ!」との相談を受けたのです。そこで、文化交流館EDOCCOのコンセプトであった「伝統と革新」と連動させれば、より強固なモノができるに違いない! と考え、ここはあえて「伝統的ではなく革新的な商品開発」を行なうことにしました。

神田明神様には、三柱の神様がいらっしゃり、少彦名命=えびす様=商売繁昌の神様の名にかけても失敗は許されない商品開発だったのです。

一之宮=大己貴命=だいこく様=国土経営・夫婦和合・縁結びの神様
二之宮=少彦名命=えびす様=商売繁昌、医薬健康、開運招福の神様
三之宮=平将門命=まさかど様=除災厄除・勝負事の神様
(神社まめ知識:神様を数える単位は「人」ではなく「柱」として数えます)
 

商品開発にとって重要な要素とは?

これは、商品の位置づけによって、また、置かれた状況によって異なるかと思いますが、個人的見解も含めて重要性を列記したいと思います。

① 商品開発コンセプト=構想力・着眼点・意外性・組合せ・販売TPO・価格戦略
② 商品自体の魅力=商品価値・性能・スペック・こだわり・独自性
③ ネーミング=インパクト・時代性・話題性・記憶に残る ★バズるきっかけ
④ ストーリー=付加価値リピート・発展性・拡張性・リピート性 ★バズるきっかけ

売れる商品には、この4つが揃っており、この項目のどこかに強烈な個性を放つものが、ブランディングとして突き抜けた成功を収めていると思います。

「神社声援」の商品開発は、セオリーどおりの①②③④の順番ではなく、①③②④という順番で生まれました。
 

神社内でのみ販売するという場所の限定性

① 商品開発コンセプト
商品開発の骨格であり、最も重要。今回は、神社で販売していなくて神社らしいモノを探しました。神社で販売するからには「気持ち」や「願い」や「祈り」が入っていないと、なかなか手に取ってもらえないのではないか? そんなことを考えながら、神社と商品のイメージをつなげていきました。

これは、「どんな場所で販売する商品なのか?」というTPOを考えることで、応用できる発想です。

② 商品自体の魅力=その商品は何が良いのか?
「世の中に既にある商品」を、売場限定、販売方法、パッケージ、ネーミングを変えて「新しい商品」として再認知してもらう手法をとりました。この手法は「既にある商品は、説明いらずで認知されやすい」ことを前提として、お客様に手軽にアプローチしやすいのです。あとは、そこに付加価値をつけたストーリーを数枚重ねます。

商品開発当初、「ジンジャエールを神社で」というコンセプトはすぐに生まれました。

「モノ」よりも「飲み物」の方が、消費が体験となりやすく、消えてなくなることから、神社との相性が良さそうとのイメージでスタートしましたが、そこから先が、どんなジンジャエールにするか? で、具体的な答えがなかなか出せなかったのです。
 

モノが売れない時代だからこそ、買いたくなるきっかけ

③バズるきっかけとなったネーミング
「神社声援」


神社でジンジャエール! オヤジギャグともとれる駄洒落(ダジャレ)=言葉あそびは、実は江戸時代から始まった歴とした文化です。

神田明神には、江戸時代に愛された文化が色濃く残ります。その江戸文化の香りをどこかに入れたかった!では、なぜ、言葉あそびが流行ったのか?

江戸時代の日本は、読み書きそろばんが発展し、識字率が高かったようです。そして、漢字の読みだけで何通りもあり、同音異義語も豊富な日本語にあっては、駄洒落のバリエーションは無数に考えられたのです。さらに上手にひねれば発想はもっと広がる。そのセンスを競ったのが「ことば遊び=駄洒落(ダジャレ)」なのです。

今回の商品開発の時にも、開発メンバー内で話題になった好例がありました。

「一斗二升五合」は、何と読むでしょうか? クイズに近い発想です。

「御商売益々繁昌(ごしょうばいますますはんじょう) と読むそうです。

「一斗(いっと)=五升の倍→御商売→ごしょうばい」
「二升(にしょう)=一升桝二つ→桝桝→ますます」
「五合(ごごう)=十合の半分=(十合=一升ゆえに五合=半升)→半升→はんじょう」
ここまでひねると、お見事! としかいいようがありません。
 

ネーミング発想時の妄想と試行錯誤!


今回の商品開発には、江戸時代のおおらかな遊び心をネーミングに取入れ、江戸の文化を取入れたかったのです。しかし、ここは現代の神田明神。近隣に秋葉原があるため、少しだけ秋葉原の文化を意識したネーミングに仕上げました。

神社エール → このままだとつまらない。
エール=応援=YELL  神社応援?  → なんかしっくりこない。

エールを送る! という基本は「発声」だ。
「がんばれー!」「いけー!」「勝てー!」などのYELLを見ていると、もっと相応しい言葉があるのでは?
そして「声援」の文字が浮かぶ。

「声」には、想いが乗り、「ことだま」となって人に届く
・・・「想いをのせることば」
これは、神社の発想に近いのでは? イケるかも?

さらに、ここは秋葉原に近いし、
「声優」「声」「アニメ」「ボカロ」との相性も良さそう・・・


そんな事象をイメージしてネーミングが生まれたのです。
「神社声援」と綴ると、神様からの声援、神社にお参りに行った方々からの声援、この商品をプレゼントしてくれた方々の声援など、いろいろとイメージが発展していきます。開発メンバー内でも様々な話題に発展し、「神社声援」という強烈なネーミングの拡張性を感じたのでした。
 

こだわりの商品発掘と製造元選定

こうしてジンジャエールを開発することが決まり、製造元として狙いをつけた炭酸飲料のメーカーは数十軒。配送コストを考慮し、関東近隣に的を絞りました。そのリストの会社を片っ端から調べ、事業規模、販売商品数、製品クオリティなどを調査したのですが、思った企業が見つからない・・・

また、東京で手に入るジンジャエールを、ネット注文を含めて片っ端から購入し、試飲大会。

メンバーの中には、「神社声援」というネーミングで十分売れそうだから、中身はどこで作っても同じではないか? という意見もあったのですが、僕は断固として大反対しました。

ありきたりのジンジャエールでは、リピートが来ない。ネーミングで釣って売れても、感動がない商品なら、そこで飽きられてしまう。そんな危機感からの意見でした。

みなさんもご存じかと思いますが、その当時のジンジャエールのトップは、ウィルキンソン社製のジンジャエールドライ。緑色の細い瓶のもの。僕も、ウィルキンソン社製のジンジャエールドライを初めて飲んだ時の衝撃が忘れられず、鮮明に記憶に残っていました。

そこで、ウィルキンソン社の商品と同じ土俵で勝負する「ジンジャエール」ではなく、違った切口の商品は無いか? とずっと探していたのです。

文化交流館の開業まで、あと3か月まで迫っていました。時間が無い、ヤバい・・・・

そんな中、一筋の光が見えてきたのです。
 

濁りの先に見えた、クリアな世界

ある1本のジンジャエールをネットで見つけました。
その商品は、他のモノと明らかに違っていたのです。白い沈殿物が瓶の底に沈んでいる?
この商品、すぐに欲しい! ネットで取り寄せる時間がもったいない!
都内のホテルの売店で販売していると聞きつけ、即購入! そのジンジャエールを飲んでみる事にしました。

ウマい!!!! イケるかも?
生姜の味が効いていて美味い! 結構カラクチだね~! すりおろし生姜の風味が爽やか~

果汁飲料で沈殿しているドリンクは珍しくないのですが、炭酸飲料で沈殿しているものは初めてでした。
沈殿物の入った果汁はシェイクしますよね。
炭酸飲料をシェイクするとどうなります? プシューって吹きこぼれますよね?
あえて相反するものを、こだわった意気込みに感動。

そのこだわりのジンジャエールは、友桝飲料という佐賀県にある飲料メーカーのものでした。

また、個人的な癖で、商品のスペックが書いてあるラベルを見るのが趣味で・・・
生姜の摺おろしを入れているジンジャエールは、その当時なかったのです。
これなら、あの、ナンバーワンのジンジャエールとは、土俵を変えて勝負できるかも? そんなことが頭をよぎりました。

そして、佐賀に飛び、友桝飲料さんと製造元として契約が成立。
しびれるスケジュールでデザインを行ない、ギリギリのところで開業に間に合わせたのでした。
 

何層にも重ねた、ご縁とストーリー

④ ストーリー
「神社声援」のガラス瓶は、「なで肩瓶」「いかり肩瓶」と2種選べたのですが、あえて「いかり肩瓶」を選択。この肩の部分にお守り(神田明神ですと勝守り)をかけていただき、相手に贈るという、願いを込めたストーリーも考えました。

親から受験生に、新しい門出を迎える友人に、先輩から後輩に・・・ご縁のバトンを渡すシーン

また、環境にも配慮し、瓶をリサイクルで返しに来てくれた方に「五円=ご縁」をお渡しするという、リピートの方にもうれしい特典をつけて幾重にもご縁を重ねたのです。「ようこそお参りくださいました」という意味合いも込めています。
 

輝かしい色の変化、コミュニケーションの向こう側

売場でのシーン。
この「神社声援」は、生姜のすりおろしが入っていて沈殿していますが、そっと3回振って混ぜます。
するとどうでしょう?
今までのクリアな色が「黄金色に輝きま~す!」
なんて、神々しいのでしょう?



この飲料は炭酸なので、すぐに栓をあけると「吹きこぼれます!」ので1分ほどお待ちください。

そして、はじめは、栓をそっとひねり、ぷっしゅーっと空気が抜けたら、栓を開けていい合図です。

そうなんです。

「神社声援」は、栓をあける時までストーリーがあるんです。
商品を購入した方々は、みなさん楽しんで瓶を振り、色の変化を楽しみ、栓をゆるりとぷっしゅー!
そして、飲んだあともその美味しさに納得するのです。

「へぇ、予想以上に辛口で美味しいね。」
「うわぁ、生姜の効果で身体がポカポカしてきたよ。」
「爽やかなオトナの味にリピ決定!」

そして、神社声援を友達やご家族に求めた方々は、「神社声援のにごり」からストーリーを繰り返し
「瓶を振り、栓をあける注意へと」話をつなげる・・・


そうなんです。

「神社声援」は、ストーリーに共感し、体験を楽しみ、口コミをしたくなる
ドリンク以上の価値あるものになったのでした・・・


「神社声援」は、EDOCCO CAFÉ MASU MASU にて販売しています。カフェ内メニューもあります。


施設ウェブサイト:
文化交流館EDOCCO

友桝飲料WEBマガジン「のみもののよみもの」にて取材いただきました!
【前編】 神社界の未来を考える仕事から、ひとつの飲みものが生まれました。
【後編】 誰かを想う気持ちを、「神社声援」に込められるように
坂爪 研一 プロデューサー
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