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飯塚 篤郎 空間プランナー
空間プランナー

シェアハウスに住んでみた|イベントが自然発生する空間の在り方

2022/02/10
なんだかおもしろいシェアハウスがあるらしい。
去年10月、そんな話がノムログ編集部に伝わってきました。大型シェアハウスなのに住んでいる人が全員仲良くて、やりたいことを自由に企画して、日々イベントに事欠かさない愉快なシェアハウスがあるらしい…と。

企画を生業としている我々空間プランナーにとって、自然発生的に対話やイベントが生まれる空間とはどのような場所なのか。コミュニティの在り方はどのようになっているのか。気になりだしたら、知りたいことがたくさん出てきて止まりませんでした。
この度、特別にそちらのシェアハウスへ2週間入居し、空間とコミュニティの関係を探るフィールドワークを行う機会をいただきました。体験する中で見えた、対話・イベントが自然発生する空間についてレポートいたします!

シェアハウス情報


名称:カミキタハウス(KAMIKITA HOUSE)
場所:住所は杉並区下高井戸。京王線上北沢駅から徒歩5分。
入居人数:40人(体験入居時)、最大326人

 

部屋:1人部屋、2人部屋、6人部屋の3タイプ(*共同部屋は人数制限の元運営中)


フィールドワーク初日に撮影。私が入居した1人部屋


部屋の設備:

ミニ冷蔵庫(ホテルの部屋にあるやつくらいです)、エアコン、ベッド、机と椅子、シャワー、ウォシュレット付きトイレ、クローゼット

個室の設備が充実しています。トイレもシャワーも個室で完結するのは有り難かったです。


共有設備:


キッチン7カ所(IHが6口、シンク2つの大型キッチン×7)
リビングやラウンジ(テレビ、卓球台、最近こたつも増えました)
シアタールーム(大型プロジェクターからの映像をヨギボーに寝ころんで観るスタイル)
ワーキングスペース(大きな机やホワイトボード、個室になる会議室も4部屋ありました)



KAMIKITA HOUSEの兄貴分として、文京区白山に同じ会社が運営するHAKUSAN HOUSEがあります。
1号物件であるHAKUSAN HOUSEの入居者は欧米を中心とした学生が8割と留学生需要が高いため、2号物件のKAMIKITA HOUSEも留学生利用を想定し、最大326人が入るキャパシティで2020年にオープン。しかし、コロナ禍の影響で海外からの留学生が日本に来ていないため、今の入居者は40人程度です。
キャパシティに対しては少ない人数ですが、シェアハウスとしては40人でも大規模!この人数の多さが、「多彩な人たちのサラダボウル」のようで好きでした(詳しくは後述します)。

それでは、実際に入居してみて感じた、カミキタハウスの空間とコミュニティの関係をレポートいたします!
 

1:刺激し合っている学生×社会人


まず、住んでいる人の属性が多種多様でした。構成としては、半分学生で半分社会人。学生も学部生・院生が共にいて、社会人も私のような会社員から、フリーランス、完全フリーターなど様々でした。
面白かったのは、学生と社会人が分け隔てなく同じ空間で過ごすことで、お互いに良い刺激を与え合っていたこと。私も大学を卒業してから、学生と会話する機会は少なくなりましたが、改めて会話をすると、勢いと行動力のある考え方に刺激を受けました。

色々な肩書の人がいる。まさに色とりどりのサラダボウル

お互いの仕事や取組みを尊敬し合っている雰囲気も、個人的には好きでした。

※カミキタハウスは、2022年夏以降、学生専用になる予定です。個人的にはとても残念ですが、ご留意ください。
 

2:世間を家庭内に持ち込んだような、絶妙な距離感


大人数が、各々自分のスタイルで生活しており、毎食一緒に食べるわけではありません。その時その場で居合わせた人で生活を共にする、全員が家族であり、全員が他人である、なんとも絶妙な人間関係がありました。
この距離感が、良いコミュニティ形成に重要な役割を果たしていると感じました。
カミキタハウスの住民は自由な人が多いです。卓球が好きで、浅草に卓球カフェを開業しちゃう人、旅好きで地図アプリを開発しちゃう人などなど、誰が何をやろうと誰も止めません。他人なので干渉しないのです。
しかし、いざサービス運用となったら、みんな全力で応援します。同じ家に住み、それまでどんな努力をしてきたのか知っているからです。

この距離感が、個人的にはすごく心地がよくて、最初に聞いていた「みんな仲良いシェアハウス」というものの根幹はここにあるのかな、と感じました。

新規入居者自己紹介の日。この時のニューフェイスは私含めて3人
 

3:好きなことを「やる」スピード感が良い


定期的にイベントを企画し、幹事として回してくれるコミュニティマネージャーという企画の専任者が、カミキタハウスの住民に存在します。
コミュニティマネージャーは2人いて、彼らがイベントを企画・運営してくれることで、住民間の交流はより活発になっていました。

しかし、彼らの取り組みで一番肝だと感じたのは、もっと根本的な人のやる気を後押しするサポートを日常の中で行っていたことです。
実際にコミュニティマネージャーに話しを聞いてみたところ、ちょっとした会話の中で「それいいね!」「やってみようよ」と、まず言う。ということを意識しているそう。その後はシェアハウスの運営会社との調整なども進めてくれます。ふわっと出てきたアイデアを逃さず、実行へ後押しする人の存在がありました。

実例として、「整い食堂」というものがあります。
シェアハウスに住む人に向けて、住民最年少だった大学生が、年上の乱れた食生活を整えようと、得意な料理の腕を活かして食堂を開いてくれたものです。

「整い食堂」の様子。料金は材料代のみ(電子送金もOK)

他にも、観たい映画の鑑賞会や卓球大会、早朝ヨガなど、誰が言い出したとも知れぬ多様なアクティビティが、まさに自発的に企画・実行されていました。
コミュニティマネージャーの意識的な「やりたい」を加速させるサポートで、これほどまでにコミュニティが活発になるとは、会社での組織運営でも参考になりそうです。
 

4:物理的な空間構成は…


良いスキームで、良いコミュニティを形成しているカミキタハウス。しかし、空間側からのサポートはもっと必要だと感じました。

例えば、共有スペースの多くは、意図した通りに使われていませんでした。

キッチンとリビングを繋ぐ外階段

床面積の関係か、キッチンとリビングでフロアが分かれており、交互に配置されています。その2箇所を結ぶために外階段があるのですが、誰も使っていません。冬の寒さもあったと思いますが、結果として、食事をするキッチンフロアのみ利用され、リビングは人が集う場所として機能していませんでした。

他にも、1階にあるラウンジやワーキングスペースなど、所謂「ワイガヤ」を狙ったスペースは各所用意されていましたが、日常的に人はそこには集まらず、常にキッチンの周りにだけ人が集まっている状態に。
食べ物の持つ重力は偉大だと再認識しつつ、例えば、フロアによってインテリアのテイストを変えるだけでも面白いですし、もっと企画らしいことをするのなら、麺類・スイーツ・お酒など、食品別にそれを楽しむ専用フロアをつくる。持ち寄りの図書スペースを作つくる。など、もっと多様な居場所のレパートリーがあれば、お互いの趣味嗜好が混ざり合い、そこでの会話や人との結びつきも、もっと面白くなりそうだと思いました。
 

おわりに

この度、シェアハウスの中に飛び込むことで、シェアハウスに限らず会社組織や自治体施設など、あらゆる場所でのコミュニティづくりに活かせるスキームを学習・体験させていただきました。人と人を繋ぐ面白さ、それを叶えるために空間に何ができるのか、多くを考えさせられた密度の濃い2週間でした。

末筆ながら、ご協力くださったカミキタハウスの皆さん、楽しい時間と素敵な繋がりを作ってくださり、ありがとうございました。
 
飯塚 篤郎 空間プランナー
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