

その中でひときわ目を引いたデザインが、ポスターや本の表紙を飾った「タイポグラフィ」です。

一般には活字の配列を意味する印刷,デザイン用語。書体の選択,レイアウトなど印刷される文字による表現,構成をさすが,現代では活字 (植字) 書体のデザインや設計,あらゆる印刷方式によるデザインを意味する。
(ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典より)
タイポグラフィを構成する重要なエレメントが「書体=フォント」です。日本語では明朝体・ゴシック体をイメージされる方が多いと思いますが、欧文書体にも同じように種類があるのはご存じでしょうか?
セリフとサンセリフ
最も古い歴史をもつと言われる欧文書体は、古代ローマの石刻文字として記録されている「セリフ体」です。「セリフ」とは、文字の端にストロークが付いたもので、例えば「C」の両端が上下に飛び出していたり、「n」の左上が飛び出しているような形です。クラシカルな印象があり、品格のあるイメージづくりにぴったりです。

一方、「サンセリフ」は「セリフ」が「ない(=サン)」という意味で、文字のディテールに細かな出っ張りがなく、すっきりとしたモダンな印象を与えます。

ふたつの書体の違いは、日本語書体の明朝体とゴシック体に似ていますね。同じことを伝えるにも、書体を変えることで、まったく異なる印象を与えることがわかります。

ブランドイメージをつくるフォント
特にチェコで流行ったとされる「FUTURA」という書体は、1923年ドイツ・バウハウスの非常勤講師だったパウル・レナーが、幾何学的な形態(ほぼ完全な円、三角形、四角形)をベースにしたフォルムをもとに開発・発表しました。「未来」を意味する名前の通り、90年以上経った今でも変わらず、さまざまなところで活用されています。
例えば、ルイヴィトンのロゴやIKEAが2009年まで広告から店舗のすべてに統一したフォントとして使っていたり、フォルクスワーゲンが広告の書体には必ず使用したりしています。「未来」を感じさせるスタンリー・キューブリックの映画『2001年宇宙の旅』のタイトルやクレジットでも使用されています。
まさに「未来」を象徴するフォントを採用することで、企業や作品のブランドイメージを高めることにつながっていることがわかります。つまりロゴのような造形的なデザインだけでなく、フォントを統一することも独自のイメージづくり=ブランディングにつながる大切な要素となるのです。
ストーリーあるフォント選び
私たちは空間デザイン・施工のお仕事に加え、その空間にまつわるネーミングやロゴ開発、VI開発に至るまで、トータルブランディングの業務も行っています。その際、サインデザインを含めたあらゆる媒体に統一したフォントを使っていただきたい、との想いから「推奨フォント」をマニュアルに明記するようにしています。
フォント選びの際には、背景にあるストーリーを大切に考えています。企業やプロジェクトの背景が、伝統や歴史を重んじているか、先進的なイメージか、もしくは伝統と未来が融合したものか、などによってフォントを選びますが、中間的な印象のある書体を選んだり、時にはオリジナル書体を制作したりします。
そして、私たちプランナーは言葉やイメージ写真で構成された企画書で勝負することが多いのですが、企画内容によってフォントを変えるようにしています。フォントのもつ世界観が企画書のイメージづくりもしてくれるのです。
皆さんの身近にもたくさんあふれているフォント。少し目を向けて観察してみると、いろいろなフォントに出会えて楽しくなりますよ!
展覧会概要
会期:2019年9月14日(土)~11月10日(日)
開館時間: 10:00~18:00(入場は17:30まで)
休館日:毎週月曜日(祝・休日の場合は開館、翌平日休館)11月4日(月・振替休日)は開館、翌11月5日(火)は休館。
会場:世田谷美術館 1階展示室
主催:世田谷美術館(公益財団法人せたがや文化財団)、チェコ国立プラハ工芸美術館
後援:チェコ共和国大使館、チェコセンター東京、世田谷区、世田谷区教育委員会
協賛:ルフトハンザ カーゴAG
助成:公益財団法人野村財団
企画協力:株式会社イデッフ
*ご注意ください*
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