突然のコロナ禍となり、早1年が経ちました。NOMLABではコンテンツのアウトプットを行う毎日ですが、ミュージアムや展示、商業施設など集客する場所を本業とする、我々が所属する乃村工藝社だからこその、今の時代を捉えて変革をつくるチャンスだと考えています。
今日はその一つの事例として、乃村工藝社が指定管理運営を行う、佐賀県立宇宙科学館(通称:ゆめぎんが)のTwitterに投稿された事例を紹介します。
※「ゆめぎんが」については、プランナー中野さんの記事をご参照ください。中野 史洋さんの記事がこちら
人口約80万人の佐賀県、人口約4.8万人の武雄市に年間約28万人の来館者
ゆめぎんがの2018年度の来館者は約28.3万人。2019年度は25.7万人(コロナの影響が2月下旬から3月にかけて出始め来館者が減少しています)。何度も足を運びたくなるような魅力的な展示は、多くのスタッフの力によって支えられています。例えば、高さ4.5メートルのワイヤー上で自転車に乗る「スペースサイクリング」などの大型展示への徹底した安全な運営。スタッフが身近な材料で手作りした、ビー玉コロコロ装置(通称:ビーコロ装置)の企画展が名物となり地域の学校を巻き込むなどなど、スタッフの熱意と工夫が満載の施設として親しまれてきました。



そんな、ゆめぎんがもコロナ禍における人と人の交流の制限がされることによって、来場者数という目標に目をつぶらざるを得なくなりました。
2つの投稿における推定リーチ数 約1億という広がり
2020年7月。ゆめぎんがの公式Twitterアカウントで2つの投稿がなされました。ビー玉にナットを接着した振り子で「ペンデュラムウェーブ」を作ってみました。
— 佐賀県立宇宙科学館 (@saga_space) July 12, 2020
約1分おきにすべてが1列にそろいます。
計算でひもの長さを出しても全然綺麗にそろわず、何度も微調整をするのがとても大変で苦労したのでぜひ見てください!!!!!! pic.twitter.com/nAf1GjEKRz
鏡6枚で作った立方体の「立体万華鏡」を作ってみました
— 佐賀県立宇宙科学館 (@saga_space) July 28, 2020
この箱を覗いたとは思えないほど綺麗ですごいものが撮れました pic.twitter.com/OMB5GTFdlv
7月12日のペンデュラムウェーブの投稿はいいねが19.8万、リツイートが6.5万、
7月28日の立体万華鏡の投稿はいいねが21万、リツイートが5.6万にも及びました。(2021年1月現在)
2つの投稿の合算で推定リーチ(※)は、なんと累計1億。それほどユーザーに「ゆめぎんが」が届いたということになります。
※推定リーチ
投稿によってどれだけのユーザーに広がったかという指標。
フォロワー数をベースに算出するため、例えば対象アカウントのフォロワーが1,000の場合は1回の投稿で1,000リーチ、2回の投稿で2,000リーチとなる。
拡散することの爆発性
SNS分析ツール「Talkwalker」(※)を用いて投稿の分析を行いましたので一部を紹介します。2つの投稿は下記の表のようにネット媒体やインフルエンサーによる拡散によって、多くの人に届きました。
※「Talkwalker」はAIによるTwitterのプロフィール内容の推計値で試算しています。
●ペンデュラムウェーブ
.png)
●立体万華鏡
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表の冒頭にあるユニーク作成者とは、ゆめぎんがの投稿に反応して、個人の投稿として発信をしたユーザー数のことですが、広がる起因となった上位のアカウントを見ると、ネット媒体やインフルエンサーから一般の若年層に多くの広がりを見せたということがわかります。
また、2つの投稿の合計した属性分析は以下となります。

さらに、投稿の地域分析は、以下のマップ。佐賀県を起点に首都圏、ならびに全世界に波及したことがわかります。

テレビで取り上げることと、Twitter拡散の波の相関関係はあまりない
次に2つの投稿のメンション数(※)と他メディアの取り上げられたタイミングの関連性を見ていきたいと考えます。投稿のあと、まずネットメディアが反応を示し、次いで、地元佐賀のTV番組、福岡など九州圏のTV番組が追って紹介し、最後に全国ネットの番組の取り上げに波及しました。1つの投稿がどんどん他のメディアへ広がっている様を見せました。以下にメンション数のグラフ示しますが、逆にTV番組に取り上げられたからといってTwitter側の波及に影響はなかったということも見て取れます。(以下のグラフ8/19を参考)
※メンション数
SNS内で対象キーワードがどれだけ言及されているか(≒盛り上がっているか)を見る指標。対象キーワードが含まれる投稿数をカウントして算出。

ただ、TVの露出によってTwitterには影響はありませんでしたが、YouTubeにおけるチャンネル登録数が増えたということを招きました。つまり、WEBメディアによって、TVへの波及する媒体特性があるということがわかります。
目標は来場者数だけなのか。
集客施設における価値・目標は、これまでは来場者数やその場所における売り上げが一番の重きでした。
今後もしばらくはコロナ禍を引きずりながら世の中が動いていくことを考えたときに、果たして今のままでよいのでしょうか。
今回の事例は、館の活動や価値発信、地域における使命の一環をたまたまTwitterで投稿しただけにすぎず、まったく予期していなかったと館のスタッフから聞きます。ただ、今回の発信が日本全国は元より、世界中の人に「ゆめぎんが」の価値が伝わったことになりました。つまり、WEBメディアをうまく活用することで、思ってもみなかったユーザーへ自分たちの魅力やコンテンツを伝えることができる証明となり、晴れて世界の往来が行き来自由となった暁にはぜひ、世界中から「ゆめぎんが」に足を向けてもらえるきっかけになるに違いありません。
この事象に目を向け、集客を行う生業である我々は、 リアルとデジタルとの融合の可能性をもっと議論を重ねていくべきだと考えます。今回の事象では、Twitter投稿の波及や数字を取り上げたにすぎませんが、そこから広がる波及や可能性をしっかり向き合って、新たな一手に挑戦すべきであると考えます。
それは、引いて考えると来場者数や集客空間からの売り上げだけでなく、さまざまなタッチポイントでの価値を発信することや、新たなアプローチでの売り上げを生むに至る、統合した事業デザインの創造が、しかるべき評価を受け、次世代のビジネスにつながることを期待したいですし、僕らがその一端を担うべきであると考えます。
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