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安田 哲郎 かけ算プランナー
かけ算プランナー

スポーツエンターテインメント空間2.0時代の到来(前編)

2021/02/19

『あきらめたら そこで試合終了ですよ』

これはあまりにも有名なバスケットボール漫画のある一節ですが、
バスケットボールに限らず、全ての人が共感できる珠玉の名ゼリフと言えます。

私は子供の頃から野球、バスケットボール、駅伝等、様々なスポーツを経験する中で、
単なる勝ち負けを超えた人生の教訓を体得してきました。

入社してからは商業施設や集客施設づくりに多く携わってきましたが、
小さい頃からの経験もあり、仕事やプライベートでスポーツエンターテインメント分野のことも長年研究してきました。

そして今回執筆に至ったのは、様々な事例を調べる中で
スポーツエンターテインメント空間が大きく変化する時代に入ってきていると感じており、そのことについて考察したいと思ったからです。

本コラムでは前編で「スポーツエンターテインメント空間の変化」に関することを、
後編で「今後のスポーツエンターテインメント空間に必要な要素」に関することを掘り下げていきます。

 

スポーツエンターテインメント空間2.0時代の到来


さて、みなさんはスタジアムと言えば野球場やサッカースタジアム、
アリーナと言えば大きめの体育館やホールを想像されると思いますが、2つの違いを知っていますか?

Wikipediaによると、スタジアムとアリーナの違いとして、

バスケットボール・アイススケートなど室内競技用の競技場を特にアリーナと呼ぶ。
それに対し、アリーナのようなスタンドがあっても、野球・サッカー・陸上競技など屋外競技用の競技場はスタジアムと呼び区別することが多い。

と記載してあります。(一部抜粋)

今回、「スポーツエンターテインメント空間2.0時代」というキーワードをタイトルで使用したのは、
スタジアム、アリーナが施設空間として新しいフェーズに入ってきている状態を端的に表現したかったからです。

※1.0時代と2.0時代の比較イメージ
 
スタジアム ⇒ 集客機能の複合化
まずスタジアムについては、単なる専用球技場から、敷地全体に集客機能を複合させ、
スタジアムパーク(サッカー)/ボールパーク(野球)として目的性を高めるという方向に今後進化していきそうです。

このことにより、非試合日や非イベント時にも集客が可能になって施設の価値が向上するという効果が生まれます。
もともとこの呼び方は欧米で生まれたものですが、近年は日本でこの考え方をさらに進化させようとしている計画を多く耳にするようになりました。


本コラムではこの集客機能の複合化の流れを「2.0時代」と定義します。
 
アリーナ ⇒ 建設・運営母体の変化
次にアリーナについては、かつては国や自治体が建設と運営を行う「営」方式がほとんどでしたが、
近年、民間企業のリソースを活かした「営」もしくは営」の計画が増えています。

この場合、民間事業として多くのマネタイズアイデアや工夫が必要になりますし、
この流れによって、民間企業のリソースを活かしたイノベーショナルな施設が多く生まれてくると考えられます。


本コラムではこの建設・運営母体の変化を「2.0時代」と定義します。




ここで後編にかけて「スポーツエンターテインメント空間2.0時代」に必要な要素について掘り下げていく前に、これらのビジネスの基本となる、スタジアムとアリーナの収益構造について簡単に整理することにします。

 

スタジアムやアリーナは
興行主へ施設を貸し出すビジネスモデルが基本


※スタジアムとアリーナの収益構造 イメージ図

まずスタジアムとアリーナのビジネスモデルには、大きく分けて、①施設保有者/②興行主/③来場者という三つの登場人物が存在します。

この三者の関係としては、
施設保有者が興行主に館を貸し出し興行主がその館を借りてスポーツ試合やコンサート等のイベントを開催し、来場者を集めるという構図です。

また、スポーツにおいては①施設保有者と②興行主が同一企業という場合もあり、この場合はホームチームが施設を保有しながら主催試合を行います。

ここで、
①施設保有者に焦点を当てると、施設貸出収益/付帯設備貸出収益/広告・スポンサード収益/飲食・フード販売収益、というような収益が得られます。

また、
②興行主に焦点を当てると、入場料収益/グッズ収益/放映権収益/二次コンテンツ化収益/飲食・フード販売収益、というような収益が得られます。

さらに先ほどの事例のように、①施設保有者と②興行主が同一企業である場合は両方の収益を得ることが可能になります。




ここまで施設全体としての大まかなビジネスモデルを整理してきましたが、
さらに施設の特徴が良く表れ、収益への変動要素が大きいVIPエリアコンコース店舗について、
今後の流れも含めて整理をしていきたいと思います。
※コンコース店舗:客席エリアの外側をとり囲むように配置された屋内通路(コンコース)沿いに面して営業している店舗。

 

施設の差別化を狙い、
VIPエリアをさらに充実させていく流れが生まれている



まず一概にVIPエリアと言っても、いろいろな形態の空間が存在します。

①    個室型VIP BOX:個室内でフードやドリンクを楽しむエリア
②    VIPラウンジ:大空間でドリンクやフードをセルフで楽しむエリア
③    企画型VIP席:差別化された企画性を前面に打ち出し、客単価アップを狙うエリア

このVIPエリアですが、当然客単価が一般席よりも高額になるため、
このエリアをいかに企業等、大口顧客に売っていくかが収益に大きな影響を与えます。

したがって高単価にふさわしい空間性とサービス性を生み出すことに事業者はとても力を入れるのですが、
特に海外では桁外れの富裕層マーケットが存在することから、VIPエリアの規模と充実度は現状の日本とは比較にならないものになっています。

一方でかつての国内施設のVIPエリアは空間としては簡素なものが多く、施設間の差異もそこまで大きくは無かったのですが、
昨今はどこの施設も差別化に力を入れ始めたため、今後は国内施設でもVIPエリアがさらに充実していく流れになっていくと予想されます。

 

ニーズやスタイルの多様化に応じて、
観覧スタイルをセレクトできる空間へ



次に飲食やフード販売、物販が並ぶコンコース店舗ですが、
ここもチケット外収入を得る意味で重要な場所となります。
何故なら飲食やフード販売、物販の売上は利幅が大きく、上手くやれば収益に大きくプラスになるからです。

ところが、コンコース店舗は購入客が一定の時間帯に集中してしまうという課題を抱えています。

例えば、野球なら試合前やイニングの合間、サッカーやバスケットボールなら試合前とハーフタイムに売上が集中します。
さらにライブであれば公演開始後にコンコースに出てくる人はほとんどおらず、公演前に売上が集中します。

そのため、時間帯毎の売上にムラが出るばかりか、短時間で提供できるファストフードばかりになり、
どこも同じような顔ぶれの店舗ばかりになるというジレンマを抱えています。

しかし、スポーツエンターテインメントに求めるニーズやスタイルが多様化してきている昨今においては、
施設側が多様なMD(業態、メニュー)や飲食空間を提供することで、いつでも客席以外で時間を過ごすことができるニーズを創出し、
一緒に来ている人やシーンに応じて、いろいろな観覧スタイルをセレクトできるような空間に進化していくと考えられます。




ここまで前編としてスポーツエンターテインメント空間の変化「2.0時代」というキーワードで定義し、その流れについて考察してきました。次回、後編ではもう少し掘り下げて、「2.0時代」の施設づくりに必要な要素について考察していきます。
 
安田 哲郎 かけ算プランナー
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