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ノムログ編集部 “空間と体験”を追求するチーム
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お台場のグランドレベルは2階にあり!? 田中元子さんとまち歩き

2022/01/20

グランドレベル田中元子さん×乃村工藝社プランナー乃村隆介、
お台場を歩きながら、まちと人への想いを語る。



乃村工藝社は2021年3月、社員のためのコミュニケーションスペース「RESET SPACE_2(以下、RE/SP_2)」をオープンしました。このスペースの誕生をきっかけに、総合企画を担当した社員でクリエイティブディレクターの乃村隆介はある想いを強く持つようになりました。

お台場のまちは、乃村工藝社の“ホーム”。だからこそ、乃村工藝社の社内で「働く人」と「地域の人」が緩やかにつながるソーシャルグッドな関係性を生み出していきたい――。
*ソーシャルグッド:乃村工藝社では、持続可能な社会を実現するため、事業活動を通して幸せなインパクトを生み出す「ソーシャルグッド活動」を推進しています。

そこでノムログ編集部は、改めてお台場のまちについて理解を深めるための「まち歩き」と「対談」を企画しました(本稿は「まち歩き編」)。ゲストとしてお招きしたのは、グランドレベルの田中元子さん。田中さんは「1階づくりはまちづくり」というモットーを掲げて独創的なアイディアで新しい街の風景や人と人との緩やかな関係性を創られている、まちづくりのプロです。

お台場の特徴はハレ(非日常)とケ(日常)の風景が混在し、意外と2階に日常の風景が広がっていること。そのため、まち歩きのテーマとして仮説を立てました。

仮説:“お台場のグランドレベルは2階にあり!?”


おふたりにはこの仮説を検証し、「働く人」と「地域の人」が緩やかにつながるヒントを探っていただきました。ユニークな視点を持つふたりが、まちを歩きながら何を話し、何を感じるのか……まち歩き編のスタートです。(続編の対談編はこちら
【取材実施:2021年10月/演出上の都合により、一部、撮影時のみマスクを外しております】
 

空が抜けるカフェで、お台場のヒューマンスケールを考える

――待ち合わせはりんかい線・東京テレポート駅のすぐ近くにあるARTBAY CAFE(2021年11月14日をもって閉店)。この日が初対面の田中さんと乃村。まずはアイスコーヒーを飲みながら、ふたりでお台場の空を見上げます。


ARTBAY CAFEにて、まち歩きにふさわしい晴天

田中「お台場に来るのは久しぶりなんです。空が抜けていて、とても気持ちのいい場所ですよね、このカフェも、お台場も」

乃村「道幅が広く、巨大な観覧車があったり、ガンダムが実物大で立っていたりと、とにかく何もかもが大きいですよね。でもここはヒューマンスケールで、人のサイズに合っている。きっと『お台場ってなんだか居心地がいいな』と感じられるのは、こういうところだと思うんです」
*ヒューマンスケール:人が暮らすうえで、落ち着きをもつことができる大きさ (NPO法人家づくりの会ウェブサイトより)

田中「『最近ちょっとお台場に足が遠のいているな』という人もいるかもしれませんが、お台場でこういうヒューマンスケールを体験したら、イメージを刷新してもらえそう」



乃村「僕、広いところが大好きで。満員電車が苦手なんですよ。人とぎゅうぎゅうと接するのが嫌で。だから公園の中の誰もいないスペースで大の字で寝るのが好きなんですけど、そんなスケール感がある場所は、なかなか他にはないんですよね」

田中「そのスケール感、お台場にはたしかにありそうですね」

乃村「そうなんですよ。ではそろそろ行きましょうか。今日はお台場をたっぷり楽しんでくださいね」

――カフェを出たふたりは、多くの人が行き交うテレポートブリッジを通って、ゆりかもめのお台場海浜公園駅に向かって歩き始めます。


テレポートブリッジを渡りお台場海浜公園駅方面へ


乃村「人とぎゅうぎゅう接するところは苦手なんですが、かといって、横丁の飲み屋街が嫌いかというと、そうでもないんですよ。満員電車のぎゅうっとした感じは苦手でも、横丁のぎゅうっと感は好き。どっちもあるからこそ、人間らしいというか……」

田中「私思うんですけど、人間も性格に多面性があるでしょう? それと同じで“好き”という感覚も多面でいいと思うんです。私は一番好きな色ってないんです。白も黒も全部好き。広いところも狭いところも、どっちも好きな自分。このぎゅうぎゅうはダメだけど、こっちのぎゅうぎゅうはOKな自分。そのどれもが正解だと思います。どちらかに決めなきゃダメ、じゃ窮屈ですよね」

乃村「決めきれないこともあるし、必ず決めなければならないこともないと思うんです、これからの時代はとくに」
 

人の手が入ることで生まれる、情緒ある風景

――多面性こそが人間らしい。そんな話をしているうちに、お台場海浜公園駅に近づいて……。1階に降り、商業施設であるデックス東京ビーチへと移動します。


テレポートブリッジを下りて1階レベルへ


乃村「弊社は(一社)東京臨海副都心まちづくり協議会に入会していて、社員が、『今年もチューリップを植えます』と話をしていたんですよ。協議会の人たちで定期的に清掃したり、花を植えたりしている。そういうの、日本的でいいなと思うんです」
*2020年度の活動はこちら

田中「それ素敵な話! こういう新しくできたまちにも、人が手入れしているシーンは絶対にありますよね。植樹や花を植える瞬間を直接見てはいなくても、植えられたチューリップを見たときに、そこにどんないきさつがあって、誰が植えたのかを読み解く楽しみがありますね」



乃村「下町では今でも家の前に植物を出して、ずら~っと並べたりしていますよね? ああいうのもいいなと思うんです」

田中「日本的な風景ですよね。よく海外はまちづくりが自由だと見られがちですけど、実は『それは許されない』っていう厳しい面も少なくないんです。私は仕事として“1階づくり”をしていますが、海外の方が『1階は全部店舗にしてほしい』『ガラスの開口を何%以上にしてほしい』とか、意外と制約が多いんです。路地に暮らす人が自由に植物を栽培して、家の前を可愛く演出する、そういうのは日本らしい情緒ある自由さだと思います」

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海側のエリアは観光客向けの商業施設が並ぶ。デックス東京ビーチに到着


――デックス東京ビーチのエスカレーターで上階に上がり、広々としたデッキに出ます。取材当日はまぶしいほどの秋晴れ。一歩デッキに足を踏み入れた瞬間、田中さんはその景色に感動したようで……。


デッキから望むお台場の景色に感動する田中さん、


田中「わぁ、ここ、すっごく素敵!!」

乃村「ですよね。実は僕のお台場のイメージって、ここなんですよ。森越しの海の向こう側に都市がある、この風景なんです。ひょっとするとお台場は、東京のブルックリンになれるんじゃないかって、ここに来るたびに思ったり(笑)」

田中「わかります、レインボーブリッジも綺麗だし。そうか、こんな風に見えるんですね」

乃村「夕方になると夕陽がとても綺麗なんですよ。空気が澄んでいると富士山も見える」

田中「あー、夕方も、そして夜もきっと綺麗でしょうね」


海辺のデッキで散策を楽しむ人々

屋台が愛されるワケはヒューマンスケールにあり?

――広々とした長く続くデッキを歩きながら、話は再び“ヒューマンスケール”に。



乃村「仕事で福岡に行く機会があったのですが、コロナ禍の緊急事態宣言で(2021年10月時点)であの名物でもある屋台が出なくなってしまっていて……」

田中「屋台街のあの独特のアジア感というか、雑多な感じってすごくいいですよね、私、すごく好き」

乃村「そうなんです。海外に行くとナイトマーケットとか屋台とか、見るたびに『いいな』と感じる。それは気兼ねなくいろんなものが食べられるとか、外の空気も感じられるとか、そのあたりがヒューマンスケールで人間らしいのでしょうね。だから屋台に惹かれる人が多いのかなと」

田中「見知らぬ屋台で食べると、意外と高かったり、思ったような味でなかったりして、不愉快な想いをするリスクもけっこう背負っていますよね。入ってみないとわからない。だからこそ、すごく学びの場になる。『ま、こういうこともあるよね』と許容できるのは、人間らしい体験のひとつだと思うんです」

乃村「このデッキにも、屋台がたくさん出たらおもしろくなりそう(笑)」

田中「賛成! お台場のデッキにある屋台でヒューマンスケール体験、とかいいですよね」


*デックス東京ビーチのデッキは3階フロアになります。

ハレとケが混在する2階で、遊んでいる子どもたちと遭遇

――デックスを出たふたり。ブリッジを渡り、次は保育園や児童館などが並ぶお台場に住む人々にとっては日常となる2階エリアを歩きます。時刻は午後4時すぎ、児童館前では走り回る多くの子どもの姿が……。


ブリッジでつながる観光エリア(ハレ)と日常エリア(ケ)



写真左手が観光エリア(ハレ)、右手が日常エリア(ケ)


田中「子どもたちがとにかく元気いっぱいで、見ていると楽しくなりますね! あんなに安心して駆け回れるのは、ここが2階で車が来ない場所だからというのが大きいんだと思います」


2階にある児童館の外では元気よく遊ぶ子供たちの姿がみられる


乃村「車が来ない分、思いきりボールを蹴れるし、安心感があるんでしょうね。1階に人を行かせず、必要な施設を全部2階に上げてしまうというのは、上手な方法ですよね」

田中「そう思います。だからこそ、お台場の2階でグランドレベルらしい広がりをもっとたくさんつくれたらいいですよね。『ここに行くとみんなが集まっているよね』『あの子、今日もあそこに来ているかも』と、ふらっと行けるみんなのお決まりみたいな、そういう場所が」


下校中の子供たちに遭遇


――階段を降りて再び1階へ。右手にお台場の浜辺が見えるはずが……取材当日は会場撤去工事のためまだ高い囲いで覆われたままの状態でした。

乃村「見てもらえないのが残念ですが、浜辺もすごくいいんですよ。日焼けすることに熱心なおじさんがいたり、座って話し込んでいるカップルがいたり、お弁当を買ってお昼休憩しているワーカーがいたり……お台場で働く人、住民、みんなのパブリックスペースとして成り立っている。僕はまちの中にはそういう場所がないとダメだと思うし、ないと息苦しくなってしまう」

「お台場のグランドレベルは2階にあり!?」――さてその答えは?

――さらに道路を渡って、レインボー公園に到着。お台場まち歩きを振り返ります。

田中「こんなにもお台場を『いいところだな』と呑気に思いながら歩いたのは初めてです。これまでは『自由の女神を見るぞ!』『洋服を買うぞ!』と目的を解消するために行く意識が強かったですね、このまちには。でも今日感じたのは、空が抜けていて、楽しそうにのびのびと遊ぶ子どもたちがいて、都会的な風景も自然もあるんだということ。そして、まち歩きの最初に乃村さんからお話があったように、ヒューマンスケールに沿った場所も多い。たくさん見所があり、これまで抱いていた印象とはまったく変わりました」



乃村「お台場は消費の街、商業施設というイメージが強いようですけど、実は普通に生活をしている場もあるんです。多くの人が働く場でもありますし。その多面性がお台場の面白さなのかもしれないですね……ところで、今日のテーマは『お台場のグランドレベルは2階にあり!?』ですが、お台場を見てまわって、田中さんはそれについてはどう感じられましたか?」



田中「私ね、『みんなが一番何を見ているか?』とか『みんなが一番どこに集うか?』みたいなことが、グランドレベルが決まるポイントだと考えているんです。1階であることだけにこだわらなくていい」

乃村「それって、人と街がつながるポイントがグランドレベル、ということでしょうか?」

田中「そうです、そうです! だからお台場のグランドレベルは2階にあり、の検証については……この先は長くなるので場所を変えてゆっくりと話しませんか」

乃村「もちろん! では弊社社内でこの続きはじっくりと」

――ということで、対談編に続きます。お楽しみに。
秘訣はセレンディピティにあり!? “働く場”と“生活の場”をつなぐセミパブリックとは

*記事化にあたりご協力いただいた地域のみなさま、ありがとうございました。
(企画:岡村有希子・市川愛・横田智子/文:源 祥子/写真:安田 佑衣)



田中 元子(たなか もとこ)/写真右
株式会社グランドレベル代表取締役。建築分野でのライターを経験後、16年「1階づくりはまちづくり」をモットーに、豊かな1階づくりに特化した株式会社グランドレベルを設 立、コンサルティングやプロデュースなどを手がける。18年私設公民館として「喫茶ラン ドリー」開業。19年より「TOKYO/JAPAN BENCH PROJECT」を始動。街中にベンチを増やす活動のほか、ベンチの共同開発やブランドの立ち上げなどにも携わっている。

乃村 隆介(のむら りゅうすけ)/写真左
商業施設の開発、地域活性化、ワークプレイスなどさまざまな分野でお客様の課題解決に取り組み、コミュニケーションを構築・空間化することに注力している。5年、10年後の未来や空間デザインをヒューマンスケールで考え、新たな領域を開拓しながら、企画構想段階からデザイン・施工フェーズまで一貫したクリエイティブ・ディレクションを担う。直近の実績は緑茶・農業・観光の体験型フードパーク「KADODE OOIGAWA」(2020年)、乃村工藝社のオフィスリニューアル本社「RESET SPACE」(2018年)、新オフィス(RESET SPACE_2など)(2021年)。

乃村工藝社のワークプレイス特設サイトでは、RESET SPACE_2をはじめオフィス改装事例をご紹介しています。セミナーアーカイブではRESET SPACE_2の効果も含めデザイナーがご説明しています。(配信期限2022年2月28日)
詳しくは以下をご覧ください。
https://www.nomurakougei.co.jp/workplace/

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