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佐竹 和歌子 プランナー
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ミュージアムへ行く理由               ~ミュージアムショップは笑顔と欲望の交錯地点!?~

2022/02/25

あなたがミュージアムへ行く理由は、何でしょう?
知りたいことがあって、観たい作品があって、企画展が面白そうで…
旅先の記念に、子どもと学ぶために、ふらっと立ち寄って… 
いろいろあります。
その理由のひとつに、「お買い物がしたくて」なんて、ありませんか?
(ない?)・・・
いえいえ、これから必ず思うはず。
そう信じるに足る、本と人に出会いました。

『ミュージアムグッズのチカラ』と大澤夏美さん

2021年に出版された『ミュージアムグッズのチカラ』という本。この中で「ミュージアムグッズ」とは単なる商品ではなく、ミュージアムの「展示の一部」であることをよく目にしました。
著者である大澤夏美さんが、ミュージアムグッズづくりに関わる人へのインタビューを通じて、その館が来館者に届けたい「想い」をグッズとしてどう表し、どんな人にどんな楽しみを得てもらえるかを丁寧に伝えてくれます。ミュージアムグッズとはある意味、そのミュージアムの分身なのだと気づかせてくれました。
これって、展示づくりと全く同じでは?
居ても立っても居られなくなり、大澤さんへ取材の連絡をしました。

  
『ミュージアムグッズのチカラ』と大澤夏美さん

大澤夏美さんは、大学でデザインや博物館経営論を学ぶ中で「ミュージアムグッズ」を研究の対象とし、自らミュージアムグッズ愛好家としても活動をされています。全国各地のミュージアムを訪れ、集めたグッズの点数はなんと1000点を超えるとか!ミュージアムグッズに特化したリトルプレスやイベントも開催されています。
ミュージアムグッズの役割を、博物館のミッションである資料の収集保存・研究・展示公開を拡げる「活動」と「体験」として位置づけ、その意義を伝えることを自らの活動の軸に据えています。

取材を快く引き受けてくださった、大澤さん。ミュージアムという場の持つチカラを解き明かすことにも通じる刺激的な時間となりました。ミュージアムをはじめ、ものづくり、コトづくりに関わる全ての人へ、心を動かすグッズとは? ショップとは? ポイントを3つに絞りご紹介します。
 

質問1)大澤さんは、なぜ、ミュージアムグッズに惹かれるのですか?

(大澤さん)
ミュージアムグッズには、本来、そのミュージアムの個性がつまっています。学芸員や研究者、ショップ運営者、地元の商店や行政の方など、こだわりと愛情をもってつくられた、その地域、その場所にしかないもの。
たとえば・・・
 


東京都庭園美術館のオリジナルマグネットバッジ。館内の美しい装飾が身に付けられます。


福岡市美術館の福かぶり猫。所蔵品の猫たちが飛び出してきた! 猫好きには堪りません。

何よりミュージアムグッズは、その館の博物館活動を伝える「メディア」でもあります。グッズに館のミッションが表わされている、それくらい尊いものであると同時に、買ってもらわなくてはいけないので、キャッチ―でわかりやすく、受け入れられるものでなければなりません。アカデミズムと経済活動と、その絶妙な案配を探ることに面白みがあります。

質問2)ミュージアムショップは、どんな空間・場であってほしいですか?

(大澤さん)
青森県にある縄文の学び舎・小牧野館の館長、竹中富之さんへのインタビューで伺ったお話です。博物館を体験している間、来館者は、時に難しい顔をして考えるなど感情に忙しいですが、体験を終えて、最後にショップを訪れたら必ず笑顔になるはずとのこと。というのもミュージアムショップは、一般的なショップと違って、店員が商品を売り込んで接客はしません。したがって、ミュージアムグッズ自らが、難しい顔で出てきたお客さんの心をつかみ、くすっと笑わせる。時に、新しい扉をひらかせるパワーを持っているはず。己の価値をグッズ自身がアピールするとのことでした。


このお話に私もとても共感しました。ショップ空間は、ミュージアムの展示空間と地続きでありながら、グッズそのものが「展示」となる場所、館のコンセプトが体現された場所であると良いと思います。

※ 詳しくは次の本に掲載しますとのこと。楽しみです。

質問3)ミュージアムグッズには、どんな可能性がありますか?

(大澤さん)
先日、千葉市美術館で「中高生プログラム ミュージアムグッズを企画しよう!」というワークショップイベントを開催しました。


千葉市美術館のワークショップの様子

参加した中高生は、あるアート作品が好き、館の建築が好き、デザイン好きなど、それぞれにこだわりがあり、どんなグッズにするか(グッズにして人に広めたい、グッズにして持ち歩きたい…などその欲望も様々)、各々楽しんで企画に取り組んでいました。ミュージアムグッズは、商品としての可能性だけではなく、博物館の教育や広報活動、ブランディングなど、館と人をつなげるコミュニケーションの材料にもなり得ます。最終的には、館に来てもらいたい! 来てもらうきっかけづくりになるように、博物館活動の柱のひとつに幅がどんどん広がることを目指して、そのお手伝いもしていきたいと思います。

※ 現在、大澤さんは次の本を執筆中。いろいろなミュージアムのまだ見たことのない新しい一面が見られそうで、今からとても楽しみにしています。
 

最後に

私たちがつくっているミュージアムの展示は、どうしたってそのものを持ち帰ることが出きません。
一方、ミュージアムグッズを買う行為は、その館の「展示(≒お宝)」を手に入れる行為とも言えるのでは?
ここだけの唯一のお宝を周りの人や、はたまた、未来の子孫に分かち合うことまでできてしまう。

ミュージアムで、お買い物。

これって、とんでもなくワクワクする、ぜいたくな行為に見えてきませんか?
ミュージアムに行く理由、またひとつ、増えました。

佐竹 和歌子 プランナー
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