空間と体験の可能性を追求する乃村工藝社のオウンドメディアnomlog(ノムログ)。
ソーシャルグッド戦略部 社会に幸せなインパクトを!
社会に幸せなインパクトを!

少し先の未来をつくる、Whateverの仕事の流儀。

2022/08/05
ソーシャルグッドをテーマに掲げ、事業を通じた社会貢献を目指しサステナブルな事業活動を加速させている乃村工藝社グループは、昨年7月に開催した「ソーシャルグッドウィーク 2021 Summer」に続き「ソーシャルグッドウィーク2021 Winter」を開催しました。そのひとつは「Inspiration Talk」と題し、ソーシャルグッドをテーマにした先駆的な取り組みをされているキーパーソンをお招きし、社会課題解決に向けたヒントやアイディアをお聞きするトークイベントです。(開催日:2022年1月14日)

地域、ジャンル超越した多彩な活動を展開しているクリエイティブスタジオ Whatever CEO富永勇亮さんをゲストにお招きし先進的な取り組み事例を交え、ソーシャルグッド活動のヒントになるお話を伺いました。


写真(左)乃村工藝社 乃村隆介、(右)Whatever CEO/Co-Founder 富永勇亮さん

Guest Speaker 富永勇亮さん
Whatever CEO/Co-Founder
広告、MV、IoT、ファッション、美術展、TVなど横断的なプロデュースを得意とする。クリエイティブスタジオWhateverを運営する他、Lyric Speakerを開発するCOTODAMA、世界初のテクニカルディレクター・コレクティブであるBASSDRUMへの出資や東北新社との共同出資によりWTFCを設立。クリエイター同士のゆるやかなネットワークづくりをライフワークとしている。

Host Speaker 乃村隆介
乃村工藝社 プランナー/クリエイティブディレクター
商業施設の開発、地域活性化、ワークプレイスの空間デザインのコンセプト立案などに従事。本日の会場となったコミュニケーションスペースのディレクションも手掛ける。

 

Whateverとは

Whateverは、デジタルクリエイティブ・プロダクションdot×dot(ドットバイドット)とニューヨークと台湾を拠点にしていたクリエイティブエージェンシーPARTY New York、PARTY Taipeiが合体し、2019年1月に創業したクリエイティブスタジオ。メンバーは54人で、日本人を中心に多国籍な構成になっています。東京、ニューヨーク、台北の他にベルリンにもシェアオフィスがあり、タイムゾーンを越えてグローバルにモノづくりをしています。
YouTube Whateverチャンネル



(富永)
自分たちのスタイルを表しているのが「Make Whatever. Rules, Whatever.」。日本語だと「Make Whatever.」は「何でもつくる」、「Rules, Whatever.」は関西弁だと「知らんがな」みたいな…、「どうでもいい」とか「何でもいい」という意味で、ルール無用で何でもつくる!のが私たちの会社です。
 

Whateverの6つの仕事の流儀

1 ジャンルを無視して
自由に考えて、細部まで、こだわりまくって作る
Think free and cross-genre. Deliver with attention to details.
(富永)
ジャンルを無視して自由に考えて、細部にまでこだわりまくってつくることを私たちはとても大切にしています。ぬいぐるみのような小さなものから常設のアミューズメント施設のような大きなものまで、アイディアから最終段階まで自分たちの手でつくっていることが特徴です。


左: Puppet(指人形)の中に入れるGuts(内臓)のぬいぐるみ。
右:シンガポール・チャンギ空港のJEWELの中にある生垣でできた迷路内の常設インスタレーション。


(乃村)
こういったものはアイディアが最初に出て、その後にプロトタイプを制作しますよね。その制作期間はどれくらいですか。

(富永)
とても短いです。CGなら数日で作ります。社内ですぐにプロトタイプをつくれることが私たちのもう一つの特徴です。
 
2 国境や人種を超えて
世界を舞台に、ものづくりをする
We make things on the global stage across borders and races.
(富永)
二つ目の流儀は、国境や人種を越えて世界を舞台にモノづくりをすることです。


フィリピン・マニラで行ったNikeのUnlimited Stadium。自分自身と無限に勝負ができる陸上競技場というアイディアを基に、無限記号(∞)とNIKEのランニングシューズのソールの形を模したインタラクティブ陸上競技場をデザインした。


ニューヨークでのGoogle Translate(Goggle翻訳)という翻訳アプリの便利さを伝えるためのキャンペーン。「英語が通じないレストラン」を無料で公開し、英語以外の多言語で書かれたメニューを翻訳アプリで見て注文できる。

 
3 プロトタイピング、デモの終わることなく
自社プロダクトをお客さんに届けるところまでやりきる
Go beyond the prototypes and experimentation.
(富永)
私たちはプロトタイプをつくるだけではなく、最終的に製品につくり上げてお客様に届けるところまでやっています。自社プロダクトをつくるのは大変ですが、リサーチ力、値付け、配送ネットワーク、PRなど、受託の仕事では身に付かない知識が得られます。また、自社プロダクトが広告案件につながることもあります。

 
JAXAの地球観測衛星「だいち」が撮影した衛星画像を使ってオリジナルのTシャツをつくるサービスWEAR YOU ARE


最終的には2020年の有料アプリランキングで世界第1位になった「らくがきAR」。拡張現実の技術を使ったアプリで、自分で描いた絵をスマホで読み込むとAR空間上でその絵が飛び出して動き出だす。
話題を呼び5日間で46万ダウンロードを達成した。

 
4 出資、技術者派遣、アライアンスなどによって
自社単独ではできない領域で、ワクワクしたものづくりをする
Make alliances where we can‘t do it alone.
(富永)
自社の力だけはできない場合は積極的に出資をしたり、技術者を派遣したり アライアンスを組み、ジョイントベンチャーをつくることで、さまざまな領域で自分たちだけではできないものを一緒に作っています。


再生している曲の歌詞が表示されるスピーカー Lyric Speaker。2015年に博報堂のチームと一緒に開発し、SXSW(サウスバイサウスウエスト)でBEST BOOTSTRAP COMPANYを受賞し、投資を受けて製品化した。

 
ニューヨークのショップ、New Standと提携して本社1階にNew Stand Tokyoを開店。女性のソーシャル課題、セクシャルヘルス課題をアイディアとテクノロジーで解決するFemtechという商品群も取り扱っている。

(富永)
New Stand Tokyoでは、まだ世の中に広がっていないけれど、先の未来で日用品として広がるべきアイテムや女性のウェルネス課題を解決するFemtechという商品群も取り扱っているのが特徴です。

(乃村)
ショップはオンラインでできる時代なのに、あえてリアルなショップでやる覚悟が素晴らしいと思います。

(富永)
商品に実際に触れ、ネットでは伝わらないことを伝える場所を用意したかったんです。このショップでは、採算よりも未来の実験をしています。また、社会性のあるものを扱うことをとても大事にしています。ソーシャルグッドウィークのテーマにも合致すると思いますが、エシカルな商品もたくさん扱っています。
 
5 未来に向けた
R&Dとコンサルティング
(富永)
新しい製品を自分たちでつくっているので、最近は企業の製品開発に携わること多くなり、未来に向けたR&Dとコンサルティングの仕事もしています。

 
SONYのtoioというゲーム機は、プロトタイピングの段階から参画し、企業の内部ではできないようなモノづくりを展開。

 
6 楽しく作れる環境をつくる
Be the environment for joyful creation.

(乃村)
受託業務と自分たちのプロダクトアウトの比率は変わってきていますか?

(富永)
残念ながら、まだ9割、8割は受託です。ただ2000年に「らくがきAR」を作ったときは受託比率を減らすことができ、さらにいくつかIPをつくっているのでもう少し受託比率を減らせると思っています。

(乃村)
自分たちでプロダクトアウトして、アイディアを出してつくっているからこそ獲得できた仕事も増えてきていますか? 

(富永)
はい、増えてきていますね。自社でプロダクトをつくっていなかったら、企業は私たちをパートナーにしなかったと思います。

(乃村)
先ほど自社でプロダクトを開発すると受託案件では身に付かない知識が得られるとおっしゃっていましたね。乃村工藝社でもこうした取り組みをやっていきたいと思っています。

 
(富永)
ずっと広告づくりで、短い期間で消えていくものばっかりつくっていて、あれだけ一生懸命考えて、一生懸命建て込みしたのに、3ヶ月後には一生懸命潰さないといけない(笑)。

(乃村)
本当にね。それってサステナブルじゃないですよね。

(富永)
そうなんですよ。ずっと後まで残るものをつくろうと考えると徐々に広告から離れていきます。
当初は広告関係がメインでしたが今は20%ぐらいです。残りの60%はコンテンツをつくっています。そこが大きく変わった部分ですね。残りの部分でいうと10%ぐらいがR&Dで5%ぐらいがコンサルの仕事に変わってきています。少しずつ広告の仕事から離れて、モノづくりが中心になってきています。
 

社会を変える新しい仕組みづくり

 

(乃村)
Whateverさんはいま、横浜市立大学の武部先生と一緒に「イネーブリング・シティ」というモノづくりだけではなく社会的な仕組みづくりに取り組んでいますね。そうしていかないと社会がよくならないとお考えでしょうか?

(富永)
イネーブリング・シティの話の前に2013年に筑波大学附属盲学校にインターネットの検索機能と3Dプリンタを融合させた「さわれる検索」を設置しました。しかし、広告キャンペーンの一環だったので3ヵ月で終了になり、その後文部科学省が認めてくれて予算が付いて3年間続きましたが終了になりました。私はとても残念に思っていて、こんなにソーシャルグッドなのに、なぜ続けられないんだ!という思いがずっとありました。

 
(動画 さわれる検索)YouTube Yahoo! JAPANチャンネル 

ソーシャルグッドを起点とした社会を評価する指標が生まれてきたら、世の中はもっとよくなるし、いままで人が実現できなかったことを実現できる社会になるんじゃないかなと思っています。それで今、武部貴則先生と一緒にウェルビーイングを実現する新しい都市像 Enabling City(イネーブリング・シティ)の実証実験を始めています。

武部貴則さん
再生医学を専門とし、2013年に26歳の若さでiPS細胞から「ミニ肝臓」を作ることに成功し国際的な反響を呼ぶ。31歳で横浜市立大学先端医科学研究センター教授に就任。再生医療の研究をすると同時に別の角度からも医療に取り組んでいる。


(乃村)
イネーブリング・シティの発想の元はウェルビーイングに対するアプローチで、ヘルスだけではなくハピネスも重要という点が面白いと思いました。それをしっかり仕組み化してエリアごとに可視化していく指標があるととてもわかりやすいですね。指標によって課題が見えてくるとより持続可能な社会に向かって進んでいけるだろうと思います。

(富永)
まさにそうですね。指標がないと継続させるのが難しいと思っています。
このプロジェクトは内閣府がやっている、未来社会を展望して少子高齢化や地球温暖化などの困難な社会課題を大胆な発想で解決していこうという「ムーンショット目標」に採択されることを目指しています。
イネーブリング・シティの事業は、乃村工藝社さんの事業とも大いに関わりのある領域だと思います。これから何か一緒にやっていけたら面白いですね。

(乃村)
ありがとうございます。社会課題を解決するためのアイディアはいろいろなところにあると思います。それを単発で終わらせず、継続させていくための仕組みづくりが必要ですね。
 

少し先の未来を考えるには



(乃村)
Whateverさんの活動は、自分たちで考えて、仕事をつくり、自分たちだけでできないものはアライアンスを組んでやっていくところが面白いし特徴的だと思いました。そのやり方はこれからの時代に必要だと改めて感じました。
最後に一つだけ質問させていただきたいのですが、今回のテーマである「その少し先の未来」を考えていく上で、富永さんが大切にしていることを教えてください。

(富永)
少し先のことを考えるには、先にR&Dをしておかないといいタイミングでモノを出せないと思います。例えばRobot Viewingは、自立自走型のロボットにカメラとモニターを付けたものです。

Doubleというテレプレゼンスロボットに新しいシステムを組み込み、遠隔から美術展やイベントに参加できる仕組みです。これはちょうどコロナのときに、たくさんの美術館から要望があって導入していただいています。今もオフィスに導入したいという問い合わせもあり、製作しては出荷している状況です。

Robot Viewingは2020年にローンチしたのですが、実はこれとかなり類似した製品を2018年に開発していたんです。それがTelethingsという製品でRobot Viewingと同じロボットをベースにして遠隔地と会話する際にいちばん足りていないフィジカルコミュニケーションができるようにしようと考えたものです。装着可能なシャボン玉やピンポン玉を飛ばす、お札を投げるなどの機能をアタッチしました。これをつくったときめっちゃ受けると思ったんですが、まったく広まりませんでした。何故かというと世の中がまだテレワークに慣れていなかったんです。テレプレゼンスを体験していないので、何か足りないかを知らなかったんです。そんなわけで2年間まったく伸びなかったんですが、コロナ期になった瞬間にRobot Viewingとして世の中に提示することができました。


 
重要なのはタイミングです。そのタイミングに合わせてプロダクトをリリースするには準備が必要なんです。つまりプロトタイピングが大切なんです。私たちはTelethingsで経験していたので、いいタイミングでRobot Viewingを出すことができました。
 

今、必要なものを探しても、未来に必要なものは見つからない。

(富永)
今は変革期なので結構やりたい放題なんですよ。Robot Viewingのような人と共存するロボットは、以前だと危ないと言われました。今だったら技術として認めてもらいやすいので、技術者の方は、こっそり温めていたアイディアがあったら出すチャンスかもしれません。そういうアイディアを一度、棚卸ししてみるのも大事だと思います。
今、必要なものだけを探していても、未来に必要なものは見つかりません。これが本当に必要かどうかというところから探って、考えてつくっていくことが求められると思います。

(乃村)
ありがとうございます。本当に面白い話をずっと聞かせていただき、あっという間の1時間半でした。これからのWhateverさんの活動をとても楽しみにしています。
 



場所にもジャンルにもとらわれず、仲間を集めて仕組みもつくってしまう、クリエイティブの力で社会に良いインパクトを実現している富永さんのお話は、ソーシャルグッドへの示唆に富んだものだったのではないでしょうか。「自社でプロトタイピングから商品づくりまでを行うことで受託案件では身につかないさまざまな知識が得られる」というお話がたいへん印象深かったです。乃村工藝社グループも「少し先の未来」に向けて、R&D活動や社外の皆さまとの共創を積極的に進め、新しい仕組みづくりと事業を通した社会貢献を目指します。(乃村工藝社 ソーシャルグッド戦略部)

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