空間と体験の可能性を追求する乃村工藝社のオウンドメディアnomlog(ノムログ)。
中村 瞳 コンテンツディレクター/デザイナー
コンテンツディレクター/デザイナー

商業施設にAR体験を導入する3つのメリット

2022/07/21

バーチャルが加速する未来の商業空間

2021年10月、米フェイスブック社が社名を「Meta(メタ)」に変更したことを発表しました。これはメタ社が従来のSNS事業に加え、「メタバース」と呼ばれる仮想空間の構築に舵を切ったことを意味しています。メタバースは日本でも波及し始めており、さまざまな企業がメタバース空間を活用し、プロダクトの販売を行っています。そんな時代だからこそ、空間創造を事業とする企業に働く身として、リアル店舗での買い物の良さは一体どこにあるのだろうと深く考えてしまうのです。

モノからコトへ。Withコロナ時代のリアル店舗の価値とは

この記事を読んでいる読者の皆様は、商業施設で買い物をするとき、何を重要視するでしょうか。目的はさまざまかと思いますが、店員さんとのコミュニケーションを楽しんだり、コーヒーショップで休憩したり、沢山の商品を実際に試したりする方が多いと思います。
試着のみの店舗や、ショールーミング型の店舗も増えてきています。
このように「モノ」を購入するだけではなく「購入を含めたさまざまな体験」が重要視されるようになって来ました。これはECやSNSが発達して「いつでも、どこでも」が可能になった分、私たちはより「体験できること」に価値を求めているからでしょう。

AR体験も「コト」に含まれてきます。今回は商業施設にAR体験を導入する3つのメリットを、乃村工藝社 NOMLABが制作を行った「じーずの森とあしあとのヒミツ」を例にご紹介します。

「じーずの森とあしあとのヒミツ」って?

「じーずの森とあしあとのヒミツ」とは、NTTドコモ「XR City」アプリ内のコンテンツの1つで、SDGsを意識した森「じーずの森」からSDGsを普及するためにやってきた個性豊かなキャラクターたちと出会う回遊型AR体験です。今後ショッピングモールなどの商業施設を中心に展開され、第一弾は、キャナルシティ博多にて2022年7月14日より体験していただけます。

商業施設にAR体験を導入するメリット1  非接触・密回避が可能なパーソナル体験

コロナで打撃を受けた商業施設は多くの人が密に集まる集客イベントを組めず、非接触・密回避といったパーソナル性の高い体験が重要視されるようになりました。
AR体験は、顧客自らが持っているスマートフォンで参加が出来、密を回避しながら自分の好きなタイミングで体験が可能なため安全性を担保出来ます。今まで人が集まる環境を気にしてイベント参加を躊躇していた層に、来店きっかけを促します。

「じーずの森とあしあとのヒミツ」は、自分の好きなタイミングで各エリアをめぐり、個性豊かなキャラクターたちと出会うエンターテインメント性の高いコンテンツです。愛着が湧きやすいキャラクター設定によって、子供から大人まで幅広い層の方にアプローチします。

商業施設にAR体験を導入するメリット2 施設の回遊性を高める

空間には、導線上奥まっていて人が集まりにくいエリアや、人の移動が起こりにくいエリアが存在します。例えば乃村工藝社のオフィス、 RESET SPACEで行った人流解析実験では、出入口から自動販売機のあるエリアの導線に人が集中することが分かりました。

それ以外のスペースでは人の移動が少なく、家具を移動するといったインテリア計画の変更によって人の移動を促していき、空間を活性化させました。RESET SPACEでの事例はインテリアという物質的な手法で空間の回遊性を高めましたが、商業施設では気軽にインテリアでの調整は難しいかと思います。物質ではないARスポットをこのような人の集まりつらいエリアに設け、施設の回遊性を高め、滞在時間を延長します。

「じーずの森とあしあとのヒミツ」は、ファッションフロア、飲食フロア等、商業施設の特性に合わせてARスポットを複数設置しており、各エリアに足を運んでもらえる仕組みをつくっています。さらに、商業施設事業者がカスタマイズできるセリフ機能で、施設のテナントや商品のPRも可能です。ARを通した新しい買い物の楽しみ方を顧客に訴求することで、体験から販売促進へと繋げます。

商業施設にAR体験を導入するメリット3 拡散性

AR体験は、リアルな空間にCGイメージを合成することによって優れたビジュアルを生み出し、さらにそのビジュアルを写真や動画で記録することが容易なため、体験者がSNSに拡散しやすい状況をつくり出します。ハッシュタグで施設名やイベント名と連動させることによって、効果的にたくさんの方に拡散することが可能です。

「じーずの森とあしあとのヒミツ」は、写真映えするスポットを用意し、思わずSNSにアップしたくなる施策を盛り込んでおり、スタンプ機能を利用し、体験者が華やかに空間を装飾できる演出も用意しています。

デジタルネイティブ世代にアプローチする、新たな店舗体験

このように、AR体験を商業施設に取り入れることによってさまざまなメリットが生じます。特にデジタルネイティブ世代であるZ世代と呼ばれる層は、自己表現や情報収集にSNSを活用します。今後はリアル店舗においても、デジタルを店舗体験に盛り込むことが重要になって来るでしょう。さらに、近年、SDGsが盛んに叫ばれるようになり「エシカル消費」というワードも出てきています。

エシカル消費とは?

消費者それぞれが各自にとっての社会的課題の解決を考慮したり、そうした課題に取り組む事業者を応援しながら消費活動を行うこと。
消費者庁webページより 

例えば「環境に配慮されたリサイクル素材」「フェアトレードのチョコレート」など、モノの魅力だけではなく、商品やブランドが発信する社会課題の解決に向けたバックグラウンドやストーリーを知ったうえで購入に至る消費です。Z世代はこれらの社会課題に大きな興味を示しています。しかしながらこのような企業の取り組みは、商業施設の店舗でぱっと見ただけでは分かりにくい部分もあるかと思います。



ARは現実には見えないもの、伝わりにくいものを表現することが可能です。商業施設やテナントショップのSDGsの取り組みをARで表現することによって、顧客にダイレクトにアプローチします。

リアル店舗での買い物の価値=体験の伴った出会い

今回はAR体験を商業施設に取り入れるメリットをご紹介いたしました。ほかにもさまざまなメリットがありますが、是非商業施設に足を運んで、実際に体感していただければ嬉しいです。



リアル店舗の最大の価値は、このような体験を通したセレンディピティ(=思いがけない出会い)を創出することではないでしょうか。音や香り、空間の持つ空気感や人のぬくもりを感じながら時間を過ごす楽しさ……歩き疲れてコーヒーブレイクをしたり、アロマショップの香りに癒されたり。
思いがけない発見があった際にココロが動き、商品を購入し、その施設のファンになります。商業施設の魅力は、その選択肢の幅の広さや出会いの多さがあることです。
顧客から求められる体験内容も多様化し、ARコンテンツの他にもリアル店舗で利用できるさまざまなアプリの開発が進んでいます。どんなコンテンツでも重要なのは、リアルとデジタルのどちらかに重点を置くのではなく、共に考え、共に発展させていくことです。日々の生活の中でそれらがどのように絡み合い、融合していくかを考え、顧客体験を最大化させる。技術の進歩と共にリアル店舗も変化していく必要があると感じています。

以前お客様とお話ししている際に「デジタルは冷たいイメージがある。対面での人と人とのふれあいが一番」という言葉をお聞きしました。
ただ単に機能としてデジタルを活用するのではなく、人と空間を繋ぐ、ぬくもりのあるデジタル体験をつくっていくことが出来れば、空間を創造する身として幸せに思います。
 

中村 瞳 コンテンツディレクター/デザイナー
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