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NOMLAB : NOMLAB(ノムラボ)は乃村工藝社の空間のプランナーを中心としたプロ集団ですNomura Open Innovation LAB
榊 遼平 ドリーミングプランナー
ドリーミングプランナー

まるで海を旅する絵本。男鹿水族館の体験ストーリー

2020/11/24
 
こんにちは
プランナーの榊遼平です。

本連載企画である「東北水族館の旅」とは、
プランナーならではの視点で東北の水族館をレポートする、水族館漫遊記です。
「東北水族館の旅」メンバーは
乃村工藝社きっての水族館プランナーである佐藤英樹さん(以降:ヒデキさん)
念願の水族館の業務に携わりはじめたわたくし榊遼平(以降:サカキ)、
好奇心抜群のネタ探しプランナー岡本悠雅(以降:ユウガ)の3人です!

前回は仙台の海の杜水族館にお邪魔しました!
まだ読んでいない方はこちらからどうぞ。
第一弾:プランナー、水族館へ行く。

 この記事はそんな「東北水族館の旅」レポートの第二弾です。
前半では、今回訪れた男鹿水族館ならではの展示の魅力についてお伝えします。
さらに後半では、水族館全体の体験ストーリーを考察し、今後の水族館プランニングへ活かしたいポイントをまとめています。

 東京から秋田の男鹿水族館までは、公共交通を乗り継いで片道約7時間。多くの人にとっては、なかなかすぐには行きにくい場所かも知れません。コロナ禍において遠方の水族館へ遊びに行きにくくなっている今だからこそ、男鹿水族館の魅力をお伝えしたく本記事を書かせていただきました。
 本記事における内容は、筆者(サカキ)の独自の考察によるものです。男鹿水族館を実際に訪れたのは昨年(2019年)の12月であり内容の整理に時間がかかってしまいましたが、男鹿水族館での「発見や驚き、感動」を出来るだけみなさまに分かりやすく、私なりにお伝えできればという想いで書かせていただきました。最後までご覧いただけますと幸いです。(館内は許可を得て撮影しています)


 さて、季節は冬真っただ中。
仙台を出発した我々一行は、道中とんでもない吹雪にさらされながらも車で北上。秋田県は男鹿半島にやってきました。そう、今回お邪魔した水族館は…?

※左から、寒さに震えるサカキヒデキさん

はるばる来たぜ!男鹿水族館!  

※晴れた日の男鹿水族館は、とってもおだやか。写真提供:男鹿水族館GAO

 今回私たちが訪れたのは、秋田県立男鹿水族館GAO(以下、男鹿水族館)です。2004年にリニューアルオープンし、現在ではホッキョクグマからアマゾン川の生きものまで、約400種1万点の多様な海の生きものを展示しているそうです。

 男鹿水族館は男鹿半島の西側先端部分に位置しています。目の前にはマグマが隆起し生まれた岩脈による雄大な地形と波飛沫をあげるダイナミックな日本海が広がっており、迫力ある光景が楽しめる名所となっています。

まるで海を旅する絵本。一本の導線が、めくるめく海の世界へ誘う


男鹿水族館HPより

 男鹿水族館には計15個の展示コーナーがあります。来場者は1~3階までのフロアを行き来しながら、順路に沿って館内をめぐっていきます。
 男鹿水族館を含む多くの水族館は、想定された順路をめぐる一本動線で構成されています。これにより、来場者は水族館の中を進むについてどんどん日常から離れ、「非日常」の海の世界へ深く没頭していくことができます。まるで海を旅する絵本を夢中でめくっているかのようですね。 
 

「男鹿の海 大水槽」コーナー


※写真提供:男鹿水族館GAO

 入場して最初に目にするのは、男鹿水族館最大の大迫力な水槽です。水量約800t、大きさにして幅15m、奥行き9.5m、深さ8mの巨大な水槽にはなんと約40種2000匹もの海の生きものが展示されています。水中を優雅に泳いでいるのはシマフグやメバルといった男鹿の海の生きものたち。海の世界への導入部となる水槽では、男鹿半島の近くの海にスポットを当てているようです。

サカキ「いきなり大水槽! 水族館にきたぞと、テンション上がりますね!」
ヒデキさん「最初に大水槽を展示することは、海の世界への没入感を高めるのにピッタリだね
サカキ「空間全体が暗めの空間となっていることにより、没入感がより際立っているように感じますね」

 そしてこの大水槽は側面からも観ることが出来ます。

※大水槽を側面からみると、かなりの奥行きが感じられます

 アクリルガラスが湾曲しているため水槽との境界が曖昧に。まるで海につつまれていると錯覚するほど、魚たちとの距離が近く感じます。


大水槽をじっくりみていると。。。あれ?あの岩、何かににているような。。。?
ヒデキさん「あっ!ゴジラ岩だ!」

※男鹿を代表する観光スポットの、ゴジラ岩を模している

ユウガ「こうした地域の“らしさ”を反映した遊びゴコロあるシカケも面白いですね。」

 こういった岩は擬岩と呼ばれ、水槽内でリアルな海の世界を再現するため、岩を模して人工的につくられたものです。こちらの擬岩はゴツゴツとした岩肌や表面の苔がいい味を出していますね。
 いろんな水族館で擬岩ばかりみていると、「あれは擬岩かな?いや、ちがうかな?」「あの擬岩のホンモノ感すげぇ!」と、どんどん擬岩が気になってしかたなくなるので注意です。笑

「日本の海水魚、秋田の森と川の魚」コーナー

 
 2階へ上がると、子どもの背丈ほどの小型水槽が並び、サクラダイやタカアシガニなど、日本の海に生息している生きものの展示コーナーへ。こちらのコーナー内は自由動線となっており、来場者は気の向くままに好きな水槽の周囲を回遊できるようになっています。
 

 近くで水槽を囲んでいた女性グループでは、「私このサカナすきでよく食べるのよ~。焼き方はね…」と、会話がはずんでいました。
 小型水槽の魅力は、1つの生きものにフォーカスされているため会話が生まれやすく、色んな角度からじっくり眺められることですね。


日本の海水魚コーナーの奥に、秋田の森や川を再現した水槽が現れました。 

 川魚が水の流れに逆らって、イキイキと泳いでいる様子が楽しめます。絶滅危惧種に指定されている希少な魚も展示されています。

 「日本の海水魚、秋田の森と川の魚」コーナーでは、明るい雰囲気の中で会話を楽しみながら、自分たちの身の回りの海の生態系について考えるキッカケの場になっているようですね。

「日本海の海底、サンゴ礁の生きもの、アマゾン」コーナー


左上「日本海の海底」このコーナーから空間の照度が下げられています。  右上「サンゴ礁の生きもの」  下「アマゾン」

 明るい自然光の差し込む世界から一転し、次のエリアからは暗めの空間が続きます。
 水槽のテーマは「海底」「温かい南の海」「アマゾン川」等、日常に近い海から遠く離れた海へと移り変わっています。

 ピラニアや電気ウナギなど、ちょっとドキドキするような海の生きものたち。秋田の男鹿半島にいながら、世界の海の生きものたちに出会えることも男鹿水族館の魅力となっていますね。

目の前にドーン!と広がる、日本海の景色

 
 ここまで照度を落としたコーナーが続いた中で、次に現れたのは広く取られた窓から見渡せる男鹿半島の”リアルな海&断崖”!
 ドーン!と開けた海の地平線が彼方まで広がり、目前には日本海の激しい波が打ち寄せるド迫力な光景はまさに圧巻。海岸に広がるゴルゴツとした岩は、約3,000万年前に火山から流れ出た溶岩だとか。

ユウガ四季によって移り変わる海や山の景色は、この場所にまた来たくなる理由の一つになりそうですね。」
サカキ「そうだね。ここでは休憩もとれるよう、ベンチや自動販売機が設置されている。男鹿の魅力的な地形を上手く借景として取り入れながら、気持ちのリセットができる場になっているみたいだね。」

「海獣、ハタハタ、タッチプール」コーナー


 次のコーナーからは、海の生きものたちが種ごとに展示されているキャラクター性を活かした水槽が続きます。
 ゆるやかなスロープを下った先には、ホッキョクグマが出迎えてくれました。

※写真提供:男鹿水族館GAO

ヒデキさん「ホッキョクグマと同じ目線の高さから眺められるプールは日本でも数が少ないんだよね。」
サカキ「たしかに、他の動物園等では柵から覗き込むような見せ方が多いような。こちらではよりホッキョクグマが近くに感じられますね。」


 続いてハタハタの展示コーナーへ。
 
 ハタハタとは、主に日本海側で食用にされる、秋田県の県魚だそうです。まさに秋田の水族館ならではの生きもののチョイスですね。写真ではお伝えできていませんが、ハタハタだけの水槽もありました。
 こういった地域を取り上げた展示は、地元の人の誇りを醸成し、県外の人にも知ってもらう良いキッカケになっています。
 ちなみにハタハタを漢字で書くと”鰰”。ちょっと私の苗字、榊(サカキ)に似てる。。。親近感!笑


また、アザラシ、アシカコーナーでは、飼育員さんが丁寧にアザラシの生態について解説してくれました。

 こんな至近距離でアザラシをみられるのは男鹿水族館ならでは、ではないでしょうか。飼育員さんの横にぴったりとくっついているアザラシが、とってもかわいかったです。

 その他にも、ペンギンやクラゲ、タッチプールなど、多くの世代に愛される生きものと出会うことが出来、とっても満足度が高まりました。

男鹿水族館の体験ストーリーから、水族館のプランニングを考える


さて、ここまでは男鹿水族館ならではの展示の魅力についてお伝えしてきました。

ここからは、男鹿水族館全体の体験ストーリーを考察していきます。
まずはコーナータイトルとその空間、及び体験した際の気持ちの変化に着目し、以下の図にまとめてみます。



※作:榊 遼平

まとめた上で気づいた3つポイントについてお伝えします。

ポイント1
身近な海の生きものから、遠い海の生きものまで。
▶広い間口で来場者を海の世界へ呼び込み、徐々に深みへ誘う

 図のタイトルに注目ください。展示されている生きものの種類は順番に、「男鹿の海→日本の海→世界の海→個別の生きもの」となっていますね。
 多くの来訪者が親近感を覚え、興味を持ちやすい海の生きものから、徐々に発展して世界の海の生きものへ。そして最後には、個性の強い生きものとじっくりと向き合う展開となっており、生きものへの理解や愛着、興味を深めることができる構成となっているようです。

ポイント2
「明→暗」や「大→小」など、緩急のある空間の連続
▶緊張と緩和のギャップが、印象深い体験を生む

 図の空間に注目ください。暗い空間と明るい空間、大きな空間と小さな空間が交互に現れています。このように緩急をつけた空間の連続は人間の本能(五感)を刺激し、より強い訴求力を持ちます。緊張と緩和のギャップにより来場者の気持ちをコントロールすることで、より印象深い空間体験をつくりだしているのではないでしょうか。

ポイント3
秋田・男鹿半島の個性を活かした演出
▶「○○と言えば、□□」がある空間は強い! 強みを育てて、次へのフックに。

 ホッキョクグマやハタハタ、男鹿半島の雄大な自然など、ここにしかない個性との出会いが生み出されています。特に哺乳類である海獣は魚類と比較して感情移入しやすく、愛着が持ちやすい生きものです。こういったキャラクターの持つポテンシャルを活かして、もう一度来たくなる・会いに来たくなるような“次に繋がる”フックをつくることができるのかどうかが、水族館プランニングに求められているようです。
 

まとめ


 本記事では、男鹿水族館をミクロ・マクロな視点で考察してみました。すると、男鹿水族館が「海の生きものへの興味を持つ・深める」場として、いかにしてより印象的な体験を提供しているかがわかってきたように思います。
 かけだし水族館プランナーとして、今回改めて体験ストーリーを整理し、水族館プランニングにおけるキーワードを抽出できたことは非常に勉強になりました。

 ぜひ皆さんも、水族館に行ったときは、空間体験における一連のストーリーを意識してみてください。きっと違った魅力が見えてきて、もっと水族館が面白く感じられますよ。

 取材・記事作成・画像提供に協力していただいた男鹿水族館GAOの皆様、本当に有難うございました。


 
 
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